国や自治体の行政サービスは納税者によって支えられているが、その納税者が提供されるサービスに不満を感じた場合、税金の減額を要求することは可能なのか。弁護士の竹下正己氏が実際の相談に回答する形で解説する。
【相談】
コロナに罹患。発熱したのに、保健所に連絡つかず。私は税金とは、国の基盤を支えるのと同時に、各種の行政サービスが受けられるチケットのようなものと考えています。それなのに、国や都の医療機関にさえアクセスできないのなら、各税金の減額を要求したいです。竹下弁護士の考えを聞かせてください。
【回答】
財務省のホームページで、税は「年金、医療などの社会保障・福祉や水道、道路などの社会資本整備、教育や警察、消防、防衛といった公的サービス」の費用であり、広く公平に分かち合う「社会の会費」である、と説明されています。
公共サービスを受けるために支払うのですから、「税金」という禍々しい表現よりも、「日本国サービス料金」とか、「××市サービス料金」と名称を変えたほうが好感を持てそうです。「料金」だと公共機関も、「お客様」である市民へのサービス維持に、真剣になってくれそうですし、国民も不十分な公共サービスの料金を減額できそう。
しかし、料金とした場合、公共サービスは国などの一手販売になりますから、都合よく金額を上げたり、それこそ料金を支払わなければ、サービスの提供をしないことも考えられます。こうなると、公平な行政は期待できません。
我々が受ける公共サービスは無数にあり、個々に対応する料金設定もできません。税は個々のサービスの対価ではなく、我が国で生活するための「社会の会費」という財務省の説明も理解できます。