「娘には、似たような価値観のなかに埋もれるのではなく、たくましく生きる術を学んでほしいと私は思っているんです。そのためには私立中よりも公立中のほうがいいと思う。でも、私立育ちの夫はどこかおっとりしているけど、いろんなことに余裕があるのも事実。公立中だと、中学に入ったらあっという間に高校受験が来てしまうけど、中高一貫校なら6年間ガッツリ人間関係を構築できるし、受験がない分、遊ぶこともできそう。とはいえ、中学受験するとなると子供にかかるストレスがすごそうだし……悩ましいところです」(Aさん)
ベンチャー企業で活きた中学時代の処世術
地域にもよるが、私立中学と比べると公立中学のほうが“やんちゃな子”が多いケースもある。ただ、そんな学校に通ったからこそ学べることもあるという。
「僕の通っていた公立中は、当時かなり“荒れていた”ほうだったのですが、だからこそ学んだことも少なくない。いろんな人が雑多にいる環境のなかでどう生き残るか、“サバイバル術”を覚えたことが、その後の人生に大きく役立ちました」
そう語るのは、東京都内の公立小・中・高から、首都圏の国立大学に進んだ30代男性・Bさん(IT企業勤務)。学校生活を送るうえで欠かせなかったのは、自分のタイプとは正反対の人とうまくやっていくことだったという。
「私は地味で目立たないタイプで、学校のなかでは“優等生”キャラでしたが、平和に暮らすためには地元のやんちゃな同級生たちと仲良くしていくことが必須でした。彼らのカルチャーや価値観を尊重しつつ、試験前には丁寧に勉強を教えたことも。一人の不良と仲良くなったら、その不良がほかの不良から私を守ってくれるようになったりして、新鮮な驚きがあったのを覚えています。自分と違うタイプの人たちを避けるのではなく、距離感をつかみながらうまく関わっていく大切さを学びました」(Bさん)
その経験が活きたのは、大手企業からベンチャー企業に転職した時のことだった。
「大手企業では同じような学歴で、似たような価値観を持つ人が多くて仕事はしやすかったです。でも、ベンチャー企業に転職したら、属性は正社員だけでなく、学生のアルバイト、パートの女性、フリーランスなど多種多様で、学歴もざっくばらん。彼らをマネジメントするうえで、中学時代の経験が役立ちました。社会に出たら嫌な人や自分には理解できない人もいます。どう受け止めて対処するか、自然と身についていたのかもかもしれません」(Bさん)
中学時代の経験をどう活かすかは、人それぞれ。中学生活で苦しみながらも“多様性”の中でたくましく育つ人もいるようだ。