2009年12月に発行された元FXトレーダー・磯貝清明氏の著書『突然マルサがやって来た!~FXで10億円稼いだ元ヒルズ族社長の絶頂と貧民転落~』(小学館)を、『マネーポストWEB』にて全文公開(全10回)。第1回は、「ごあいさつ」と第1章「逃げろ!? マルサがやって来て同時多発捜索だ!」の前半です。
(ここに書かれている内容は、断り書きのない限りすべて同書発行時点のものである点をご了承ください。また、本文中に登場する人物名は、著者・磯貝氏を除いて仮名です)
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ごあいさつ
皆さん、はじめまして。磯貝清明と申します。突然ですが、僕は、FX(外国為替証拠金取引)で儲けたお金を脱税しました。国税局査察部、通称「マルサ」の強制捜査を受け、東京地検に告発されています。
脱税総額は1億6000万円。2004年から2006年までの3年間で僕が申告していなかったFXの利益は、4億5000万円にのぼります。
しかし、100年に一度といわれるこの金融危機の影響で大損してしまったうえ、すべての資産を差し押さえられている今の僕に、払える力はありません。
おまけに、僕が払わなければならない1億6000万円の所得税には、1日あたり5万円超の延滞税が課されています。毎日、毎日、僕の負債は5万円ずつ増えています。
それでも僕は、この税金を完納すると決めています。もう普通の収入しか得られなくなった僕にとって、これは並大抵のことではありません。猛烈な逆風に見舞われ、凍てつくような寒さに襲われ、時には身を焦がすような灼熱の地獄にふるい落とされることもあるでしょう。
それでも、僕は決してあきらめません。あきらめない理由はただひとつ。「人間、あきらめたらおしまい」だからです。納税は、国民の尊い義務です。僕はそれを怠った結果、億単位の負債を抱え、極貧生活を余儀なくされています。
これはだれのせいでもなく、運が悪かったわけでもなく、僕自身の身から出たサビ。だからこそ、何があろうと、自分で落とし前をつけなければならないのです。
負け惜しみのように聞こえるかもしれませんが、マルサの強制捜査を受け、刑事告発されたことも、決して悪いことばかりではありませんでした。人の痛みを知り、人の温かさにふれ、そして納税の意義を実感することができたからです。この得がたい経験をだれかに伝えることで、今度こそ社会に貢献できる人間になろう。
そんな決意を込めて、この本を書くことにしました。この本は、どこにでもいるフリーターだった僕が、FXと出会い「ヒルズ族」と呼ばれるまでに成り上がり、そして脱税摘発後の極貧生活へと転落していくまでの記録です。そして、そこからもう一度、必死に這い上がろうとしている現在の僕の姿も、ありのままに伝えていきたいと思っています。
国民の皆さん、国税局の皆さん、「ヒルズ族」とその関係者の皆さん、ご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした。たとえ一生かかっても、支払うべき税金を完納し、今度こそ社会に貢献できる人間になります。どうかその姿を、見届けてやってください。