輸出拠点への措置を選択的に厳しくすることも可能
中国のゼロコロナ対策は、行き過ぎだと考える人は少なくないだろう。まるで生物兵器の拡散を防ごうとしているかのような厳しい対策だ。
日本では上海の一部地域における事実上の都市封鎖が大きく報道されているが、先ほど示したように感染者数が圧倒的に多いのは長春市をはじめとした吉林省である。
ただ、中国の統計は症状の出たものだけを感染者数としており、PCR検査で陽性になったが無症状の者の数は別に発表している。日本で感染者として報道されているのはこちらの数字だ。この無症状者(海外からの流入者を除く)の数をみると、4月5日時点で確認されているのは、本土全体で1万5239人だが、上海市が1万3086人と全体の86%を占めている。ちなみに長春市の無症状者数は1336人で、上海市の発症ベースの感染者数は268人に過ぎない。
上海市では、この無症状者の数の多さから都市封鎖を行うということであるが、無症状者と症状が出た感染者数のバランスが他の地域と著しく異なっている。もう一点気になる数字を挙げておくと、全国ベースで死亡者はゼロである。連日、ほぼゼロといった状況が続いている。
中国が行うPCR検査の精度は一体どの程度なのだろうか。長春市の知人によれば、PCR検査は口内の粘膜を綿棒で撫でることで行われ、その結果はアプリ上で示されるだけである。人口の多い上海市で検査数が増えており、全国での検査数は1日、1000万件を超えるとみられる。感染地域では基本的に全市民が48時間に1回のペースで検査が行われることになっているようだ。10~20件をまとめて一つにして検査をしていると聞く。
上海市は輸出の一大拠点であり今後、この地域で感染者が増え、長春市並みの措置が取られたとすれば、生産、物流が著しく停滞し、中国の輸出産業は大打撃を受ける。
先日まで、やはり輸出拠点である深セン市で実際に発症した感染者数が少ないにもかかわらず、事実上の都市封鎖が行われていた。
起源問題を巡る米中の衝突、米ロの化学兵器、生物兵器開発に関する論争、現在も続く中国の厳格な入国制限……。今もって新型コロナウイルスにははっきりしないことが多すぎる。