この4月の年金制度改正によって、受給開始時期を遅らせる「繰り下げ」の上限年齢は、70才から75才に延長された。年金の受給開始年齢は、原則65才。66才から1か月単位で遅らせることができ、遅く受け取るほど、年金額が増える仕組みになっている。
もともと65才が受給開始年齢だったのが、今回の制度改正で10年も遅らせることができるようになった。それはつまり「あと10年は元気に働いてほしい」という国の意図も感じ取れる。
受給開始年齢の上限が75才になったのに伴って、働く高齢者にとってはうれしい制度変更がある。働きながら受け取れる「在職老齢年金」の減額基準の引き上げだ。これまでは、60才から64才までは、働いて得る収入と年金収入の合計が月々28万円を超えると、年金が減額される仕組みだった。この上限が、月々47万円までに引き上げられたのだ。
収入が増えても年金額が減りにくくなるので、収入の上限を気にせず、思いきり働けるようになった。65才以上なら、年金額をより増やしやすくなる。4月からの「在職定時改定」により、年金を受け取りながらでも、働いて厚生年金保険料を納めていればすぐに受給額に反映される。「年金博士」ことブレイン社会保険労務士法人の北村庄吾さんが説明する。
「65才以上でも、厚生年金の被保険者として働いていれば、毎年8月までの納付実績に応じて、10月に年金額が改定される仕組みになりました。65才以降で年収240万円の場合、受給額は年間約1万3000円ずつ増えることになります」