“関西料理界のドン”が新型コロナで急逝して1年が経とうとしている。腕利きの料理人であり、テレビにも引っ張りだこだった人気者には莫大な遺産があるのだろう。だが、彼の急逝を機に隠されていた真実が明らかになる。【前後編の前編】
「花に水、人に愛、料理は心」といえばピンとくる人がいるかもしれない。包丁一本、関西で成り上がった料理人である神田川俊郎さん(享年81)が遺した言葉だ。
人気料理番組『料理の鉄人』(フジテレビ系)で鉄人たちと激戦を繰り広げる一方、独特のユーモアでお茶の間の人気者となった。そんな彼が新型コロナウイルスによる肺炎で亡くなったのは、昨年4月25日のこと。一周忌を間近に控えるなか、神田川さんの周囲に不穏な空気が流れているという。
「神田川さんの遺産として、大阪・北新地にある『日本料理 神田川本店』の土地と建物、それとは別に大阪市内に自宅マンションがあったのですが、このうち自宅はすでに長男に相続されているのに、お店はいまだに神田川さん名義のまま、相続が済んでいないようなんです。家族構成がやや複雑だと聞いていたので、“遺産相続をめぐってトラブルになっているのでは”という声が聞こえ始めています」(大阪の飲食店関係者)
神田川本店は北新地のど真ん中にあり、「土地だけで4億円は下らない。めったに売りに出ない土地なので、建物も含めた実際の売買となるとその倍以上になる」(地元不動産)という。この状況に、司法書士法人ABC代表の椎葉基史さんもこう言って首を傾げる。
「相続税の申告が、被相続人が亡くなってから10か月以内にされないと延滞税がかかり、そこからさらに数か月経つと無申告加算税も課せられてしまいます。そのため10か月以内に遺産分割の話し合いを整えて、申告手続きを終わらせるのが一般的です。多額の相続税がかかるケースで1年近く経っても登記をしていないとしたら、ちょっと不自然ですね」
一体、何が起きているのか。神田川さんは京都府生まれで、中学卒業を機に大阪に出て料理人の道を歩み始める。日本料理の老舗『なだ万』で修業した後、22才で独立し、創作おでん屋『ふく柳』を開店。4年後の1965年に日本料理店『神田川』を開くと、事業を拡大して、現在では大阪・北新地に神田川本店のほか『味神田川』『和ふらんす神田川』を展開している。私生活では3人の子供に恵まれたが、どちらかといえば家庭より仕事に集中するタイプだったようだ。