住まい・不動産

人生120年時代の住宅事情 80代で「自宅が寿命、賃貸にも入れない」問題

“終の棲家”のはずが…

 建物の老朽化で具体的に起きる問題の90%以上を占めるのは、「水問題」だと長嶋氏は言う。

「雨が降った時の雨漏りと、上下水道の配管からの水漏れの2つです。リフォーム時には建物の内外について、水の問題を点検しなければいけません。また、高齢になれば家の段差をなくし手すりを設けるなどのバリアフリー工事も必要です」

 それらのリフォームには数百万円以上の費用がかかると想定される。抜本的な解決策として、郊外の戸建てを売却して駅近のマンションを購入したり、自宅を建て替えたりする方法はあるが、さらに多額の資金が必要になる可能性がある。賃貸への住み替えも一筋縄ではいかない。

「高齢者が賃貸に入居できるかどうかは、最終的に大家さん次第です。これまでは高齢の方を入居させてしまうと『孤独死』のリスクがあるため、敬遠されるのが一般的でした。最近は大家さん向けの孤独死保険が登場するなど、高齢者が賃貸を借りるうえでのハードルは下がりつつありますが、今後の見通しはわからない部分も多い」(長嶋氏)

 富裕層は24時間介護が受けられる「有料老人ホーム」を“終の棲家”に選ぶこともできるが、その先行きも不透明だ。東京商工リサーチによると、老人福祉・介護事業の倒産は2016年から5年連続で100件を超え、2020年は118件と過去最多だった。高齢化が進行する一方で人手不足は深刻化しており、今後は「お金はあるのに入居先の老人ホームが見つからない」などの事態が起きる懸念もある。

 仮に入居できたとしても、“中の問題”に悩まされる可能性もある。介護・暮らしジャーナリストの太田差惠子氏が言う。

「他の入居者との人間関係がうまくいかなかったり、認知症を発症してトラブルを起こして施設を追い出されて路頭に迷う可能性もある。寿命が延びて施設にいる期間が長くなるほど、問題に直面するリスクは高くなる」

 80~90歳を迎えて終の棲家と決めたはずの家を失い、路頭に迷うリスクすらあるのだ。

※週刊ポスト2022年4月29日号

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