「自宅の居心地が悪いのか」「会社で自分の居場所がなくなることへの恐怖があるのか」と勘繰ってしまうが、転職相談を受けているキャリアカウンセラーの錦戸かおりさんによると、その内実はさまざまなようだ。
「私が相談者さんから聞いた限りでは、週2日、あるいは週3日ぐらいがベストという人がだいたい半々ぐらいの印象です。住宅事情で仕事スペースが満足に割けないとか、小学生以下の子供がいると騒ぐので仕事にならないとか。あと、サテライトオフィスが自宅の近くにないというケースもあってフルリモートは難しいと考えているようです」
一方で、会社でのコミュニケーションがメンタルヘルスに影響していることも、フルリモートを避ける要素としてありそうだ。錦戸さんも「フルリモートはさびしいという声がよくある」と語る。
「テレビ通話アプリを使って打ち合わせや会議をしていると、雑談のようなちょっとした会話が相当減ります。会社組織でも、実はそうした会話で無意識に相手の人間性を把握していたようなところがあった。他愛ない世間話にも意味があったのだなと、コロナ禍になって初めて実感した人は多いのではないでしょうか」(錦戸さん)
昨今、社員の心理面を重視する「心理的安全性」や社内の意思疎通を企図した「1 on 1面談」といったキーワードがよく取り沙汰される。そうした場面では、社内における指示や教育的なコミュニケーションではなく、お互いがわかり合うための対話が重視される。
社内コミュニケーション量の減少は、特にテレワーク時代においては労使双方にとって課題といえそうだ。テレワークでは欠けがちな対話のようなコミュニケーションを補う仕組みが必要。そんなことも意識しながら転職後の働き方を考えてみるといいかもしれない。
取材・文/岸川貴文(フリーライター)