■すんません……。悪気はなかったんですけど通帳を隠しちゃいました
「B銀行の通帳はどこにあるんですか?」
ケータイで話していたマルサの人にこう尋ねられて、僕は飛び上がりそうになりました。なぜならそのB銀行の通帳とは、さっきラウンジに隠した預金通帳のことだったからです。どうやら銀行口座については事前に調べ上げているようでした。
バカなことしちゃったよなあ……。後悔しても、後の祭りでした。
「えーと、そのー、18階のラウンジのソファの下にあるかも……」
マルサの人は、血相を変えました。
「ラウンジ!? なんで通帳がそんなとこにあるの!」
「すんません……」
「いつ持ってったの? どういうつもりなんですか!」
「いやその、ホラ。別に何も悪いことしてなくても、パトカーとかおまわりさんが通りかかるとなんだかソワソワして、つい変なコトしちゃうってあるじゃないですか。そんな感じなんです、深い意味はないんですよ」
苦しい言い訳をする僕に、マルサの人はあきれた様子で、
「とにかく、さっさと取って来なさい」
と、命じました。この一件で、ほかにもいろんなものを隠していると思われてしまったようです。捜索の間、こってりしぼられました。