ここで通されたのは、会議室みたいなごく普通の殺風景な部屋。さっきから僕を質問攻めにしていた人と、その上司みたいな人が2人やって来て、また同じような質問をしつこく繰り返しました。
僕もまた、
「本当ですって」
「もう何にも隠してないですから」
と、同じような答えを続け、約2時間後にようやく解放されました。時計を見ると、深夜1時を過ぎていました。
後からわかったことですが、この日は僕のマンションと会社、実家に加え、なんと僕がFXの口座の名義を借りていた元カノや従業員の家にも一斉にマルサが入り、家中ガサ入れしていったのだそうです。
なんで僕がFXの口座名義をいろんな人に借りていたかというと……、実はたいして意味なんかありません。強いて言うなら、口座毎に取引する通貨をドルとかポンドとか変えたりすることで、自分のトレードの通貨毎の「戦績」が一目瞭然になるから、ということでしょうか。
短期トレード用の口座と、長期トレード用の口座も使い分けていました。いずれにしても、彼女たちは僕に頼まれるまま名前を貸してただけで、なんの関係もないんですが、すっかり共犯者扱いされてしまったのです。
「会社休まされたんだけど(怒)」
「大事な日記まで持っていかれたんだから!」
などと、激しいブーイングがたくさん寄せられました。おまけに僕の金を持って逃げてくれた井上さんの家も、後から捜索されてしまったそうで、僕はひたすら頭を下げるしかありませんでした。