田代尚機のチャイナ・リサーチ

中国経済の正念場 「ゼロコロナ政策」を絶対に失敗できない理由

ロックダウン(都市封鎖)中の上海で、路上に立つ防護服を着た警察官(AFP=時事)

ロックダウン(都市封鎖)中の上海で、路上に立つ防護服を着た警察官(AFP=時事)

一部地域の都市封鎖が全体の消費に影響を与える

 ただ、中国で新型コロナウイルスが流行しているのは、ほんの一部の地域という認識だ。

 4月18日現在、中国本土感染者数(症状の出た感染者。無症状者は除く)は3297人。この内、100人以上の感染者数が出ているのは上海(3084人)だけである。10人以上は、吉林(88人)黒竜江(64人)、広東(20人)、江蘇(11人)の4地域。10人未満の地域は江西(9人)、山西(5人)、北京(2人)、浙江(2人)、山東(2人)、河南(2人)、そのほか河北、遼寧、安徽、湖北、湖南、雲南、陝西、青海が1人である。

 直近では上海市が全体の94%を占めているが、3月の時点では、吉林省長春市が圧倒的に多かった。つまり、新型コロナウイルスは全国に蔓延しているわけではなく、流行はピンポイントであり、3月の時点で都市封鎖が行われたのも、長春市、吉林市、上海市、深セン市など極めて限定的であった。にもかかわらず、国家全体の消費に大きな影響を与えている。なぜだろうか。そこには2つの理由が考えられる。

 ひとつは、一部の限られた地域における都市封鎖であっても、全国に広がるサプライチェーンの一部が寸断されてしまえば、それが全国に影響してしまうこと。もうひとつは連日のマスコミ報道により、中国人民の頭の中に新型コロナウイルスへの恐怖心が強く刷り込まれ、消費活動に影響していることが要因だと考えている。

 だとすれば、景気刺激策は効果が出にくいはずだ。新型コロナウイルスを完全に抑え込まない限り、いくら当局が景気刺激策を打ち出したところで、消費、不動産販売の回復は難しい。インフラ投資を実施しようにも、作業員が集まらない。

 中国当局はこれからどう対応していくのか。これまでの流れから考えると、コロナとの共存を図るのではなく、ゼロコロナ政策を一段と強化し、できるだけ早期に流行を抑え込もうとするのではなかろうか。

 というのも、今年の秋に行われる中国共産党全国代表大会では、習近平政権の第3期入りが決まる。全共産党員を納得させるためには、経済社会を安定させ、全人代で決めた5.5%程度の成長率を達成させなければならない。

 できるだけ早い時期に新型コロナウイルスを封じ込め、その後、減速した経済を引き上げるための思い切った政策を五月雨式に発動する目論見だろう。だが、それが達成できなければ政治面で大きな混乱を招きかねない。ゼロコロナ政策の成否は今後、中国の安定、世界経済の成長に大きな影響を与えそうだ。

文■田代尚機(たしろ・なおき):1958年生まれ。大和総研で北京駐在アナリストとして活躍後、内藤証券中国部長に。現在は中国株ビジネスのコンサルティングなどを行うフリーランスとして活動。ブログ「中国株なら俺に聞け!!」(https://www.trade-trade.jp/blog/tashiro/)も発信中。

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