■「普通の収入の人が億万長者になるのも夢じゃない」……その言葉は本当だった
商品先物には決済期限がありました。僕が大失敗したのは、すべてこの期限のせいです。好きなタイミングで決済できたら、きっと儲かったはずなのに。
「先物みたいに、期限が来たら強制決済とかされるんでしょ? それが苦手でさ」
すると彼は、信じられない言葉を口にしました。
「期限はありません。ロスカットされない限りは好きなだけ持ち続けられますよ」
「……本当かよ?」
ロスカットとは、損が大きくなり過ぎないための仕組みです。簡単に言うと、上がると思って買ったのに大きく下がってしまった場合、含み損の額があらかじめ納めている証拠金の一定割合を上回ると、これ以上損が大きくならないように強制的に決済(ロスカット)させられます。
この仕組みがあれば、投資したお金がゼロとかマイナスになるようなことはなくなるわけです。
ちなみに、ロスカットさせられるほど大きい値動きをしても、いずれは値を戻すと思うなら、追加で証拠金(追証)を入れることで、ロスカットを避けることができます。この点は、商品先物と同じです。
彼は、たたみかけるように魅惑的な言葉を口にしました。
「外貨を買った後、期待通りに値上がりしないときには、スワップポイントを受け取りながらのんびり待っていてもいいんですよ」
正直、にわかには信じられない思いでした。でも、こんな有利な取引なら、今度こそ儲かるかもしれない、今までの損を取り返せるかもしれない、そんな思いが頭をもたげました。
幸か不幸か、先物から足を洗ってからはまじめに働いてきた甲斐あって、それなりにまとまった入金が期待できるようになっていました。ちょっと試すだけなら、と、すっかりその気にさせられてしまったのです。
「じゃあ、100万円だけ」
「さすが磯貝さん! これは少し前まではプロのディーラーしかできない取引だったんですが、法律が変わって個人でもできるようになったんですよ。これからすごいブームが来るんじゃないかなあ。だってFXで成功すれば、普通の収入の人が億万長者になるのも夢じゃないんですから」
数年後、彼の言ったことはすべて本当になりました。