■損切りなんてもったいない! 「スワップ要員」として大事に塩漬け
今度こそ、大儲けができる。僕はそう確信しました。今回は100万円しか投資していないけれど、元手となる証拠金をもっと増やせば、もっと儲かるに違いない。
あっという間にFXの魅力に取りつかれた僕は、手持ちの資金をどんどんFXの口座に入金するようになりました。元手が大きければ大きいほど儲けのチャンスは大きくなるので、その資金を作るため本業のスクラップ業にもいっそう精を出しました。
僕は自営なので、がんばりが直接、収入アップにつながります。おまけにこの業界は基本的に現金主義なので、仕事をすればその場で現金が手に入るのです。
仕事をして、FX口座に入金して、外貨を買う。僕はこのサイクルを繰り返すことに夢中になっていました。普通のサラリーマンならこうはいかないでしょうが、働けばその日にFXに資金を突っ込めるわけですから、とにかく働きました。
運がよかったのか、相場に助けられたのか、適当なタイミングで取引しても、利益がどんどん増えていきます。働いて入金すれば、面白いように儲かるので、毎日が楽しくて仕方がありませんでした。
しかし、時には予想に反して円高になり、損をすることもありました。普通ならこういうとき、「損切り」をするのがセオリーです。それ以上トレードを続けても、もっと損が大きくなる可能性もあるので、その段階でいったん決済して損を確定させ、また出直すのが投資の基本とされています。
でも僕は、決して損切りをしませんでした。先物と違って期限はないんだから、また上がるまで待てばいいと思ったのです。そもそも、外貨を持っていれば毎日スワップポイントが貯まっていくのに、損切りなんてもったいないじゃありませんか。
そこで僕はマイナスが出ているポジションは、「スワップ要員」と呼んで、マイナスが出ても大事に塩漬けしていました。
こうしたマイナスのポジションを差し引いても、FXを始めた2004年には、いきなり約1200万円の利益を出すことに成功したのです。
FXに慣れてくると、ドル以外の通貨にも興味が湧いてきました。特に気に入ったのは、イギリスの通貨ポンドです。
当時の僕のトレードは、1万通貨単位でやっていたので、だいたいどの通貨でも1円動けば、1万円の利益または損失になります。だから、単位が大きい通貨のほうが値動きも大きく儲けるチャンスも大きくなります。
たとえば、1ドル=110円の米ドルが一晩で2円も動くことは少ないけれど、1ポンド=200円のイギリス・ポンドなら、このぐらいの値動きは日常茶飯事。ほかの通貨と比べてダイナミックな取引ができます。さらに、「スワップ要員」になる可能性を考えても、ポンドは魅力的でした。
僕がFXを始めた当時のアメリカの政策金利は年1%台だったけど、イギリスは年4%くらいあったので、もらえるスワップポイントの額は大きな違いがあったのです。もちろん、リスクとリターンは裏表の関係にあります。
値動きの荒い通貨は儲けるチャンスは大きくても、損したときのダメージも大きいし、高金利通貨はそれなりのリスクがあるから金利が高く設定されているわけです。でも当時の僕に、そんなことはまるっきり、眼中にありませんでした。
儲けることしか頭になかったのですから。