浮き沈みのなかで健康も取り戻したようだ。
「私は『ダイヤモンド映像』という、最大年商100億円のAV会社を経営しておりました。あのままだったら、毎晩酒池肉林の大騒ぎをしていたでしょうから、会社が残っていたとしても、私自身は病気で死んでいたと思います。倒産後は地下鉄代もなく、三軒茶屋から四谷まで3時間かけて歩いたこともございました(笑い)。しかし、このウオーキングで体が鍛えられ、節約もできましたから、何がプラスになるかわからないよ」
運が向かないときは「オレを見ろ!」と村西さんは言う。
「ソフトバンクの孫さんのような成功者なんて、宝くじに当たったようなもの。そんな人をうらやんでも意味がない。つらいときは、自分より下の人がいるのを知ることです。たとえば大海原で、あなたが遭難して救命ボートをこいでいるとする。大波がきて『もはやこれまで』と諦めたその横に、板切れにつかまって必死で陸を目指す73才の、それもパンツ一丁の私の姿を見てごらんなさい。『ああ、下には下がいる』と元気になるでしょう」
村西さんの近著のタイトルは『人生、死んでしまいたいときには下を見ろ、俺がいる』(祥伝社新書)。その言葉通りのメッセージだ。
取材・文/佐藤有栄
※女性セブン2022年5月5日号