「会社任せ」は危険
多くの会社員にとって、老後資金の柱となるのが「退職金」や「企業年金」だ。だが、その“常識”を覆すニュースが飛び込んできた。
生保最大手の日本生命が4月5日、企業から資金を預かって運用する確定給付型(DB)の企業年金の予定利率を2023年4月に現行の1.25%から0.5%に引き下げると発表したのだ。
長引く超低金利下で運用が難しくなっていることが理由とはいえ、運用時に約束する予定利率が引き下げられると、企業が年金支給額を維持するためには掛け金を増やさなくてはならず、それができなければ金額を減らさざるを得ない。日生と契約する企業は全国で約5200社に上るため、影響は大きい。多摩大学特別招聘教授の真壁昭夫氏が言う。
「昨年10月の第一生命に続き、業界トップの日生が引き下げに踏み切ったことで、ほかの大手も相次いで引き下げる可能性があります。
日生と契約するある食品メーカーでは『掛け金の積み増しをせざるを得ないが、従業員が多いので負担は数百億円規模になる見通しだ』と嘆いていました。企業には強烈なインパクトです。余裕がある企業は足りなくなる掛け金を増額できますが、難しい企業も多いはず。そうなれば給付額を下げるなど痛みを伴うことになります」
公的年金に続いて企業年金まで減額となっては、会社員はたまったものではない。企業年金には社員への支給額が決まっているDBのほか、会社が負担する掛け金の額だけ決めて運用先は社員が自ら選択する「確定拠出型(DC)」があり、両方を併用している企業もある。
「もはやDBで会社任せにするのではなく、DCで自ら備えなくてはならない時代になっている。日生の利率引き下げは、そうした発想の転換を促す強烈なメッセージといえます」(真壁氏)