納得のいくがん治療を選ぶ上で大きな悩みとなる「金銭面の負担」。一般的に、がんの治療には平均数十万円の医療費自己負担が必要とされる。さらに治療費だけでなく、長引く入院・通院生活の間の収入をどう確保するかなど、不安は尽きない。『ドキュメント がん治療選択』(ダイヤモンド社刊)の著者・金田信一郎氏(会員誌『Voice of Souls』代表)が語る。
「がん治療に要する経済的負担として私が一番に挙げたいのは、交通費です。がん患者は感染症対策のために公共交通機関が使いにくく、タクシー利用を想定するべき。私の場合、放射線治療のために1か月半、毎日通院しましたが、自宅との往復にタクシーを使うと高額になりすぎるため、治療中は病院近くのホテルに部屋を取りました」
がんの治療費と生活費を同時にどう確保するかは大問題と言える。そこで知っておきたいのが、がんになった際に受けられる公的制度だ。まず、必ず押さえておきたいのが高額療養費と医療費控除である。
前者は公的医療保険の加入者を対象に、1か月の医療費の自己負担に限度額(一般的な所得なら月8万~9万円)が設けられ、それを超えた分が還付される仕組みだ。
利用には加入する医療保険の窓口(保険証に記載)への申請が必要で、超過分が戻るまでに申請から数か月かかる。
限度額の対象期間が1か月単位であることにも注意が必要だ。例えば限度額が8万円の場合、ひと月の治療費窓口負担額が15万円なら差額の7万円が還付されるが、支払いが月をまたいで7.5万円ずつ、計15万円では対象とならない。
一方、「医療費控除」は、1年間の本人と家族の医療費の総額が一定額(10万円。所得合計200万円未満の場合はその5%)を超えた場合、税務署で確定申告をすることにより税の一部が戻る制度。「高額療養費」の対象が保険診療に限られるのに対し、医療費控除は保険適用外の先進医療や自由診療にかかった費用、金田氏の悩みでもあった医療機関までの交通費なども控除の対象になる。
ただし、「高額療養費」「医療費控除」のいずれも一度は窓口で自己負担分を支払うのが原則だ。