2019年に総務省が「老後資金として公的年金だけでは不充分。貯蓄が2000万円は必要」という内容の発表をしたことで、老後における経済的な不安を抱いた人は多かっただろう。この数字はコロナ禍前の2017年の「家計調査報告」の数値をもとに算出されたものであり、最新の試算では2000万円も必要ではないともいわれているが、それでも老後に不安が残るのは事実だ。老後に備えて優先すべきは、貯金か、ローンの返済か──。
今年の4月に夫が退職したばかりの専業主婦のnekowa7さん(仮名・67才)。現在は夫婦2人の生活を楽しんでいる真っ最中。貯金はできなかったが、綿密な人生設計を考え、実行してきたという。
「貯金をするよりも、教育費や住宅ローンの返済を優先してきました。ただし、お金がなくて不安にならないよう、人生設計は若い頃からしっかり立てておきました」(nekowa7さん・以下同)
2人の娘の教育費は、金利がいいときに入った学資保険でまかなう。それが終わったら住宅ローンの返済に集中。30年前に住宅ローンを借りたときは、金利が5.4%だったので、金利が低くなる機会を見計って3回借り換え、最後には金利が1%になったという。
「借り換えの場合、手数料・保証料・登記費用などがかかるので、その支払いも考慮して、どれくらい得になるか計算しました」
その結果、25年のローンを17年で完済した。
「ローン返済後は、その分のお金を個人年金に充てました。昔、夫が一度退職をしたときの退職金も個人年金に充てています。いまは個人年金を月約16万円(夫婦2人の合計)もらっています。ですから、貯金がなくても困ることはありません」