コロナ禍で失われていた人の集まりが元に戻りつつある。そうしたなかで再び活性化するのが新宗教の動き──。今年7月の参院選で注目されるのは、「宗教票」の政治への影響力が増していることだ。それは自民党と公明党の連立政権内での力関係の“逆転”からも見て取れる。
大型連休前の政界は自公が“参院選向け”の緊急経済対策で補正予算を編成するかどうかをめぐって激しく衝突した。公明党の山口那津男・代表は、「経済対策を決めたら財源として補正予算も指示しないと間に合わない。対応を誤れば政治の責任にもなりかねない」と強く要求。自民党は「財源は予備費でまかなえる」と反対したが、党首会談で岸田文雄・首相が折れ、今通常国会で異例の補正予算を組む方針が決まった。参院選前に経済対策で支持者に成果を示したい公明党の完勝だった。
その背後にあるのが創価学会の集票力だ。公称信者数約827万世帯を誇る創価学会は日本の10大新宗教の中で、依然として最大の政治力を持つ。その集票力は「800万票」と言われたが、選挙のたびに得票を減らし、前回参院選(2019年)では約654万票(比例代表)に落ち込むなど長期低落下傾向にあった。それが昨年の衆院選で「711万票」(比例代表)を獲得し、健在ぶりを見せつけた。政治ジャーナリストの野上忠興氏が指摘する。
「創価学会は衆院の小選挙区あたり大体2万~3万票の集票力を持ち、自民党議員の当選を支えている。仮に、学会票が全部野党候補に流れた場合、自民党議員は100人規模で落選する計算になる。いまや自民党は学会票がなければ政権維持できないし、岸田首相も参院選に勝って首相の座を守るためには言うことを聞かざるを得ない。公明党・創価学会の存在感、政治的発言力は明らかに以前より増している」