選挙があると、お金が動く──。特に突然の解散総選挙になると、「特需」が生まれる業界もあるようだが、いったいどんな業界がその恩恵に預かっているのか。広告会社出身で、過去に選挙関連の仕事にも携わった経験があるネットニュース編集者の中川淳一郎氏が、選挙の裏側を明かす。
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衆議院の解散総選挙に限らず、参議院選挙でもそうですが、必要不可欠なのが広告代理店です。自民党は電通、立憲民主党は博報堂……、といった形で担当の会社が存在し、CM撮影、ウェブサイト制作、新聞等の広告制作、屋外広告など、ありとあらゆる分野での広報・広告活動を任されます。
ここでかなりの金額が動くわけですが、参議院選挙の場合は日程が分かっているだけに、随分と前からの準備が可能です。しかし、衆議院選挙の場合、突然「ヨーイドン」と開始することがあるため、そこから先が大変です。
10月31日に投開票した衆議院選挙の場合は、そもそも衆議院の任期が10月21日に迫っていたため、前もって準備できていた面はあるかと思います。しかし、解散が急遽決まるような場合は、広告代理店も大騒ぎです。そこから慌てて広告枠を押さえに走ったり、突貫で各種制作物を作ることになるからです。
しかし解散が急遽決まった場合は、仕事が大変になる一方で、より多くのお金が動く面もあります。いわゆる「特急料金」というものがあるのです。たとえばCMの枠にしても、テレビ局はある程度“急に用意できる枠”を準備はしていて、こうした枠は通常の枠よりも高く売れます。制作をするにしても、急遽撮影スタジオを抑えたり、人員を手配したり深夜でも稼働させたりするなど、普段よりも高く請求されるものなのです。
広告主である政党としても、ここで別の業者を見つけるほどの余裕はない。万全の態勢で選挙に臨むためには、多少高くても飲まざるを得ない。さらには「解散総選挙は頻繁にやってもらった方が我々としては有難い。2012年の解散総選挙の次はたった2年先だったのであの時は『特需』だった」(広告代理店営業)との声もありました。