駅から教会本部までは徒歩20分の道のりだが、駅前にはすでに教会の法被を着た人たちの姿がある。コンビニの前でアイスクリームを食べている高校生たちも天理教の法被を着ている。駅前のバーで働く天理大学の学生いわく、「住民の4割ほどが天理教信者」であるという。
「私は親が天理教信者で、天理生まれ天理育ちです。ここに住む人たちは生まれたときから当たり前のように生活に天理教が溶け込んでいるのです」
カウンターに座る別の天理大学の学生も話す。
「僕は北関東の生まれですが、天理教に対する偏見に悩んでいました。でも天理市に越してからは偏見を感じたことはないんです」
恥ずかしながら私も、これまで新宗教に触れる機会に乏しかったこともあり、冷ややかな目で見ていた節がある。しかし、数日間天理教本部に通ってみるとその印象も薄れてきた。職員は施設の隅々まで案内してくれる。こちらの疑問には真摯に答え、その上、勧誘行為は一切ない。
世界救世教の職員の、「どんな宗教も肌で感じることが大切」という言葉を理解した旅だった。
【プロフィール】
國友公司(くにとも・こうじ)/1992年生まれ。筑波大学芸術専門学群在学中よりライター活動を始める。7年間かけて大学を卒業後、フリーライターに。著書に『ルポ西成 七十八日間ドヤ街生活』(彩図社)、『ルポ路上生活』(KADOKAWA)。
※週刊ポスト2022年5月20日号