住まい・不動産

マンション住民の高齢化が引き起こす「管理不全問題」 老朽化放置で廃墟化への不安

年代別の「持ち家比率」(2018年住宅・土地統計調査結果/総務省統計局)

年代別の「持ち家比率」(2018年住宅・土地統計調査結果/総務省統計局)

このままでは廃墟に

 国土交通省の推計によれば、築40年超のマンションは20年の103万戸から40年には4倍の404万戸になるという。

 また、東京都が実施した調査では、1983年以前に建てられたマンションの約16%に管理不全の兆候があると分かった(2021年12月末時点)。同調査では、「管理組合」「管理費」「修繕積立金」「総会開催」「管理者」「管理規約」「修繕の計画的な実施」の7項目について、いずれかが「ない」と答えたマンションを「管理不全の兆候がある」と判定している。

 実際、近年は台風で屋根が吹き飛び雨漏りしても仮の補修しかできないケースや、上層階の床下の配管が腐食したまま放置され、階下が水浸しになったマンションがあったと報じられている。

「戸建てから築25年のマンションに住み替えた60代男性のケースでは、引っ越した2年後にそれまで管理組合を率いてきた理事長が亡くなり、他の理事も高齢化していたため、組合が機能しなくなってしまった。外壁のタイルが剥がれ落ちても修繕できず、『売るに売れない事態になる』と危惧していました」(都内の不動産仲介業者)

 1980年代初めに建てられた都内のマンションに住む70代の男性が言う。

「何年も前から共用部の自動ドアやインターホンに不具合が頻発しているが、管理組合の役員が定数に達しない、予算がないなどの理由で、一向に修理の話が進まない。エントランスに置かれた革張りのソファーも破れたまま。中庭の植木も3年前の台風で倒れてからずっと放置されている。このままでは廃墟化するのではないか。

 最近になって、修繕積立金と管理費を数千円ずつ値上げする話が出てきたが、年金とわずかな預貯金しかないので、毎月の負担増にも頭を抱えている」

 戸建てを売ってマンションにダウンサイジングする――実は机上の空論なのかもしれない。

※週刊ポスト2022年5月27日号

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