まず「後見人の解任」ですが、後見人に不正な行為、著しい不行跡、その他後見の任務に適さない事由があることが、解任が認められる要件です。典型的な例は、お金を着服したなどの場合です。ご質問では、後見人の過度に厳格な預かり金の管理が問題のようですから、不正や著しい不行跡とは言えないので解任は難しいでしょう。
「後見監督人の選任」ですが、後見監督人は、例えば後見人の能力が劣り職務遂行に不安があるなど監督の必要がある場合に選任されます。後見人の事務を監督することなどを職務とし、多くは弁護士などの専門家が選任されますから、報酬の支払いが必要になります。また、現在の後見人の財産管理が厳格に過ぎるというだけでは、後見監督人の選任の必要があるかは疑問です。
次に「後見事務の監督」は、家庭裁判所が適正な後見のため必要と判断した処分ができますが、子供たちに何かを認めるものではありません。後見人において、被後見人の日常生活や介護、療養などに関する身上監護への配慮が不足しているのであれば、ご両親を親身に思う子供の誰かが身上監護の事務を行うことが適当な場合もあります。そこで、「追加の成年後見人の選任」を家庭裁判所に求めるのがよいと思います。
その場合、成年後見人が複数になりますが、複数の後見人を選任するときは、家庭裁判所がそれぞれの後見人が担当する事務を定めることになります。ただし、身上監護に要する費用の支出ができる範囲で一定程度の預金通帳や現金を預かることになる可能性はありますが、従来の成年後見人が行っていた財産管理に必要な通帳類をすべて預かることはできないでしょう。まずは、成年後見の開始決定をした家庭裁判所に相談してください。
【プロフィール】
竹下正己/1946年大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年弁護士登録。射手座、B型。
※女性セブン2022年6月2日号