■1億6000万円の納税指令! 「ちょっとだけ、まけてもらえませんか?」
そして、いよいよ、修正申告の数字が決まる日がやって来ました。すっかり通いなれた国税局も、この日ばかりは緊張します。
いつもの部屋に通されると、修正申告の用紙を渡されました。
「数字を読み上げますので、言った通りに記入してください」
ボールペンを持つ手が、心なしか震えていました。そこで言い渡されたのは、世にも恐ろしい数字。2004年から2006年までの3年間で、僕が申告していなかったFXの利益は4億5000万円にのぼりました。
そして、納税しなければならない所得税の額は、なんと1億6000万円!!!
予想を遥かに上回る額に、僕はもうその場でぶっ倒れそうになってしまいました。そもそも、今の僕に金がまったくないことは、国税局の人が一番わかってるはずなのに。
「そんなあ。勘弁してください」
泣きを入れる僕に、担当さんは
「勘弁も何も、納税は国民の義務です」
と、容赦ありません。
そこで僕は、おそるおそる、切り出してみました。
「……ちょっとだけ、まけてもらえませんか」
「はぁ?」
国税局の人は、あきれ顔で言い放ちました。
「あなた、何言ってんの? そんなことできるわけないでしょ」
「……でも、本当にそんなお金ないんです。それはそちらのほうがよくご存じじゃないですか」
「お金があるうちに払わなかったあなたが悪いんでしょ? がんばって全部払ってください」
「いや、もちろん払いますけど……、もうちょっと安くなれば……」
「なりません!」
……。
後から聞いた話ですが、少なくともマルサのガサ入れが入るような悪質な脱税事案で、税額をまけてもらえるということは、まずあり得ないのだそうです。
最初からわかっていれば、国税局の心証をよくするためにあれこれ気を遣ったりすることもなく、言いたいことも言ってたし、家賃を前払いした間はヒルズに住んでいられたのに……。
それでもあきらめきれずに、修正申告を終えた後も、1000万円の現ナマをかき集めて納税し、頭を下げてみましたが、やっぱりダメでした。
結局、半年かけた僕の税金値切り大作戦は、すべて水の泡となってしまいました。