仕方がないので、顔なじみのマルサの担当者に電話して、
「たった今、変な人たちが来ていろいろ調べていったんですけど?」
と尋ねたところ、
「ああ、トッカンだね」
との返事。
マルサの人によると、この人たちは特別国税徴収官、略してトッカンと呼ばれる人たちなのだそうです。六本木ヒルズに住んでいたころに捜査を担当していたのは東京国税局の、いわゆるマルサと呼ばれる人たちでした。
しかしこのときの僕はすでに、埼玉の実家に住所を移し、修正申告も終えたので、今度は埼玉県を管轄する関東信越国税局というところが確定した税金を徴収する業務を引き継いだらしいのです。トッカンはそこの偉い人たちなのだということでした。
「マルサは令状がないと捜査できないけれど、トッカンはそんなものなくてもどこでも調べられるからね」
そんなすごい人たちだったのか! その後もトッカンの人たちは何度かやって来ましたが、それからは丁寧に応対するよう心がけました。
でも、汚くしてる部屋の写真まで撮らせてくれと言われたときにはさすがに閉口しましたけど。
何はともあれ、これ以後、僕の金の出入りはこのトッカンの人たちにすべてチェックされ、最終的に会社の土地や銀行口座、生命保険にいたるまであらゆる資産を差し押さえられてしまいました。
■ケータイで数十円の割引クーポンをゲットするのに必死の生活
ヒルズのマンションを引き払ってからは、会社の片隅にある小部屋のようなスペースが僕の住まいになりました。
広さは約2畳、風呂はないので流しで頭を洗い、体は除菌ウエットティッシュできれいに拭き取るのが日課。2枚重ねて拭くのが、ささやかな贅沢です。
ちなみに、会社の片隅といっても、会社の土地自体が差し押さえられているので僕のものではありません。だれのものかというと、その名義は「財務省」です。
要するに、僕は国のお情けで土地を借り、そこで細々と仕事したり生活したりしているわけです。それなのになぜか、固定資産税は僕に請求されるのが腑に落ちませんが、家賃を取られているわけではないので仕方ありません。
食事は実家からの差し入れと、近所の野家、サイゼリヤ、バーミヤン、かっぱ寿司、くら寿司のローテーションが基本。近所にこれだけファーストフード店があると、結構、周りの友人にもうらやましがられます。
かみごたえのある食材を食べると早く満腹感が得られるので、回転寿司ではまずゲソ(イカの足)を頼むのが節約のポイント。めちゃくちゃ腹が減っていたときには、「ゲソ10 貫!」と注文したこともありました。マクドナルドに行くときも必ず割引クーポンを持参します。
ちなみに、初めて行く飲食店では、席についたらまず、
「ケータイのクーポンとか、やってますか? 」
と聞くのが習慣です。
あると聞けば、その場でクーポンのダウンロードが完了するまで、絶対注文はしません。5分かかっても、10分かかっても、とにかくクーポンを入手。以前は一晩に何万円も人におごっていたけれど、今は数十円の割引ゲットに必死です。
洋服も、以前はブランド物をとっかえひっかえ着ていましたが、今はでかけるときにはもっぱらスーツ。