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モノの値段はどう決まるのか?「スイスの高級腕時計」と「日本の伝統工芸品」の違い

「ガリガリ君」のCMが意味するもの

 では、モノの値段の決定権はどこが持っているのか。たとえば、企業は「原材料費が上がったので、値段を上げさせていただきます」と言ってもよさそうだし、そう言わなければいけないのだが、なかなか言えない。こらえきれずに上げる時は「精一杯頑張ったんですが……」と侘びるようにして上げる。

 これを笑いで誤魔化したのが、数年前に値上げしたアイスキャンディー「ガリガリ君」の値上げのCMだった。値上げはしたくないんですが、どうしようもないんです、許してくださいという内容のフォークソングをバックに、社員一同こうべを垂れている光景が映し出され、僕は笑った。と同時に、このCMは、価格決定権が企業にあるとは限らないことを物語っていたのである(結果的には値上げしたけど)。

 一方で、企業が強引な価格設定をしていると思われるようなモノもある。何百万円もする超高級腕時計は原材料費等に企業の利益を上乗せして決められているような感じではない。僕はオーディオが趣味だが、超高級ブランドのアンプの蓋を開けてみると、中の基盤には、秋葉原で売っているようなごく普通の抵抗やスイッチやボリュームや半導体が載っていて、どうしてこのような価格になるのかよくわからなくて困惑する(と同時に笑っちゃう)。

「音がいいからだ」という性能にもとづく反論もできるだろうが、目隠しをして音を聴かせてみると、超高級機よりも20分の1くらいの値段のアンプのほうがいいと言ってしまうことだってある。また、スイスの超高級腕時計は上野のアメ横で売っているデジタル時計よりもはるかに精度が高いということは、ない。

 極めつけは、ストラディバリウスというイタリアの名工が作ったヴァイオリンで、何十億円というバケモノみたいな値段がついているが、これまた目隠しして他のヴァイオリンと聴き比べをさせると、プロが当てられないことがある。しかし、ここから先が大事なところであるが、このような事実が公表されてしまうと、ストラディバリウスの値段が急落するかというと、そんなことはない、いまも順調に上がり続けているのである。

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