市場関係者が注目しているのが、息子への「世襲」だ。
「永守氏はこれまで、『息子には継がせない』と一貫して世襲を否定してきましたが、トップ交代が相次いだことで『息子さんしかいないのでは』という声が一部であるようです。ただ、いくら息子とはいえ、これだけの企業の経営を任せるのは容易ではない」(福田氏)
永守氏には2人の息子がいる。長男の貴樹氏は東証プライム上場の日用品メーカー・レックで社長を務めている。次男の知博氏は、一時日本電産の系列会社にいたが、その後、自ら起業。「AI搭載ロボット」を研究する注目企業を率いている。
知博氏は2017年、ジャーナリストの田原総一朗氏と対談し、父について、
〈サラリーマンの親父を持っても、八百屋の親父を持っても、親父は親父。親が有名な経営者だから、余計にリキむとか、プレッシャーを感じることはない〉(『PRESIDENT』6月12日号)
と答えている。絶対的なカリスマに意見できる後継者がいないなか、堂々とこう言える存在は少ないことだけは確かだ。
後継者問題の先行きは不透明だが、業績は絶好調の日本電産。グローバル企業への飛躍を遂げるため、来年から社名を「ニデック」へと変更することも発表された。今後の成長の鍵を握るのは「ポスト永守」が定着するかどうかに懸かっている。
(前編から読む)
※週刊ポスト2022年6月24日号