〈もし口座に突然4000万円が入金されたら、“ちょっとだけなら”と思って使ってしまうかも……〉、〈いきなり大金が手に入ったら、誰にも言わずに海外に逃げる。うれしいよりも、怖い〉。
日本中をザワつかせた山口県阿武町の「4630万円問題」。誤送金で転がり込んできた大金の返金を拒否した24才の男には批判や驚き、呆れ、共感などさまざまな意見が噴出した。最終的には当事者の逮捕によって騒動は幕を閉じたが、この事件がきっかけで「もし自分のもとに大金が転がり込んできたら……」と妄想した人は多いだろう。そこで、実際に“そんな経験”をした著名人に話を聞いてみよう。
「他人のお金、しかも税金を勝手に使ったわけだから、彼は悪党。同情できないですよね。だけどもし同じ状況になったら、そのうち何人が、すぐにお金を返そうとするか……。正直ぼくも断言できるか自信がない(苦笑)」
“4630万円問題”にこんな感想を寄せるのは、歌手の円広志(68才)。1978年、25才のときにデビュー曲『夢想花』が大ヒットし、極貧生活から一転、印税として大金が転がり込んできた“経験者”だ。
「忘れもしません。『夢想花』の印税として最初に入ってきたのが600万円。当時は給料から家賃を引いて残るのは1か月4万円ほど。すでに結婚もしていましたが、嫁もぼくも10万円以上の現金なんて持ったことがなかった。
もう、びっくりして『まずは現物が見たい』と600万円全部おろして自宅に帰り、嫁に100万円ずつ札束を見せて、『まだあるぞ、まだあるぞ』って……(笑い)。そのあとふたりで中華料理の出前を食べきれないくらい注文して9000円使って、後は銀行に戻しました」(円・以下同)
円に大金をもたらした『夢想花』はその後も売れ続け、最終的に80万枚の大ヒットを記録した。
「だけどご存じのようにあの曲の後は鳴かず飛ばず。仕事がないから時間はあるし、売れなくなってからもしばらくは印税が入るから金もある。朝からパチンコして酒飲んで、家族で旅行して……。
そんな生活を続けた結果、2年くらいでお金を使い果たして地元の大阪に帰りました。もちろん貯金なんてしないですよ。まだ若かったから何も考えていなかったんです」