幸せな結婚をしたものの、月日が経てば関係性も変わっていく。コロナ禍で顔を合わす機会が増え、関係性が悪化し、“家庭内別居”となるケースもあるという。離婚問題に詳しい弁護士の齋藤健博さんがいう。
「夫婦関係は破綻したものの、家や子供、見栄、金銭的な理由などから離婚はしたくない夫婦が家庭内別居を甘んじて受け入れることが多いように思います」(齋藤さん)
離婚をすれば家賃や生活費などの負担が重くなる。となると、ハードルの高い離婚より、手っ取り早く顔を見なくて済む家庭内別居を選ぶのもうなずける。顔を合わせなければけんかも避けられる。とはいえ、憎い相手が家にいるストレスなど、デメリットもある。どうしたら家庭内別居を負担なく続けられるか。世の女性たちに聞いた具体例と専門家のアドバイスを見ていきたい。
【実例1】夫と義実家からの責めで針のむしろに(42才・会社員女性)
15年前に夫(47才)と結婚した当初、私は世にいう“勝ち組”でした。会社経営をする夫に、一人息子は名門の中高一貫校に合格。タワーマンションで、何の不自由もないセレブライフを送っていました。
ところが、3年前に夫の事業が傾き始め、同時に投資詐欺の被害に。義実家の援助でマンションは維持できたものの、夫は借金まみれになりました。不幸は重なるもので、このタイミングで夫は脳卒中で入院。言語障害が残り、働けなくなりました。
それまで専業主婦だった私も働きに出るようになりましたが、息子の教育費までは払えず、それを息子に伝えたところ、義実家にまでバレてしまい、学費は義実家に肩代わりしてもらうことに……。義母からは、「これくらい稼げないでどうするの」などと嫌みを言われ、体調の悪い夫は毎日イライラしていて、私に当たるように……。
離婚も考えましたが、これまで贅沢をさせてくれた夫を見捨てられず、また、義実家からの金銭的な援助の恩義もあります。息子の学費も私だけでは払えません。とりあえず、家庭内別居をして怒鳴り散らす夫とは距離を取るように。夫はベッドで寝たきりなので、住み分けは簡単でしたから。
この家庭内別居がいつまで続くかわからず、絶望的な気分になることもあります。
【アドバイス】夫と距離を置いて人間関係の再構築を
「生活環境が激変すれば人間は変わります。ご主人の病状が安定したら状況が変わることもあるかもしれません。家庭内別居で夫と距離を置くのは人間関係の再構築のための前向きな手段と捉えてはいかがでしょう」(夫婦関係コンサルタント・川崎貴子さん)