年俸数千万円、数億円というスター選手がいる一方で、毎年100人以上が「戦力外」になるというプロ野球界。コーチや球団職員などとしてチームに引き続き関わることができるのはごく一握りで、多くの場合、それまでとは違う道への転身を模索することになる。そのセカンドキャリアを築く難しさと、新たな取り組みを追った。
Aさん(20代)は小学校から始めた野球で中学、高校でも活躍し、高校卒業と同時にドラフトで指名されてプロ野球選手となった。しかし「戦力外通告」(契約解除)を受けてプロ野球界を去り、セカンドキャリア(再就職)を望んでいるがうまくいかず、現在はアルバイトと貯金を取り崩しての生活だという。
「勘違いしていたと思います。トントン拍子でプロになり、そのまま活躍していけると考えていました。しかし、プロの世界は甘くありません。毎年、全国からトップレベルの選手が集まってきてトップレベルの努力をするなかで、自分も努力していましたが、力の足りなさを思い知らされました」
そうやって、プロ野球界だけでも毎年100人くらいのアスリートが去って行くという。その後の生活の保障がないのは、プロアスリートの宿命でもある。そして、セカンドキャリア探しでは、多くの元プロアスリートたちが苦労しているという。
Aさんも、そのなかのひとりだったわけだ。そのAさんに、セカンドキャリアで求めるものを訊いてみた。
「安定です。戦力外通告を受けたら生活がどうなるかわからない、と怯えながらの毎日でしたからね。だからこそ、いまは安定を手に入れたい」
セカンドキャリア探しでは、元プロアスリートならではの悩みもある。Aさんが続ける。
「それまでは『求められて行く』という人生でした。それがセカンドキャリア探しでは、『求められる』のではなく、自分の方が『お願い』しなければならない。その切り替えがうまくできません。それに学歴的には高卒なので、これが会社に入るためにはネックになっています」
とはいえ、プロ野球選手になるまでに支えてくれた人たちは少なくなかったはずである。その人脈を使えば、苦労せずにセカンドキャリアも手に入れられるのではないか、と第三者的には考えてしまう。それに、Aさんは次のように答えた。
「野球で自信をなくしたので、野球関係の人脈には頼りたくなかった。プライドというか、負い目みたいなものがありましたからね」