コロナ禍や相次ぐ物価の上昇を受けて、これまで主婦をしていた人の中でも、そのスキルを活かせる仕事を始める人も少なくない。仕事に役立つ主婦のスキルとはどのようなものか。その実例を見てみよう。
昨年11月、神奈川県逗子市でレストラン「キッチンカフェ ひとは」をオープンした斎藤智子さん(67才)。
「私の実家は二世帯でした。母は早くに亡くなり、その後1階に父と弟が住んでいたのですが、7年前に2人とも亡くなってからは空き部屋に。このままでは家も傷むし、せっかく親が残してくれた家ですから活用したいと、貯金をはたいてリフォームを計画。どうせなら、夢だったレストランにしようと考えました」
斎藤さんはシングルマザーとして2人の子供を育て、同時に、保育士などの資格を生かし幼稚園や保育園に33年間勤めた。主婦として料理を作っていたとはいえ、前職とは違う道。なぜ、レストランを始めようと思ったのか。
「私の母の実家がお寺なんですが、小さい頃からいつも、近所の人が大勢集まると、祖母や母が手料理をふるまっていました。それで私も、たくさんの人に手料理をふるまって、“おいしい”と言ってもらいたい、それで自分ひとりでも食べていけるくらい稼げたらこれ以上の幸せはないなと考えるようになったんです」
保育園の給食を作っていたことはあったが、料理は“母の味”を再現した家庭料理だ。
「友達にふるまうと“おいしい”と喜んでもらえますが、仕事として提供するにはどうかと悩んだときもありました。でも、母から受け継いだ味こそ、私にしか作れない味。これで勝負してみようと思いました」
主婦、給食作り、娘としてのこれまでの料理経験が、新しい仕事につながったのだ。