建物の解体費200万円!でも土地は売れず…
都内在住の隅田洋一さん(54才・仮名)は両親を亡くした後、秋田県の実家を相続。帰郷の予定はなく相続放棄を考えたが、思い出の詰まった実家を手放せなかった。
誰も住んでいない実家には年3万円ほどの固定資産税がかかり、無駄な出費を嫌った隅田さんは実家の売却を決意。不動産業者の助言もあり、まずは200万円かけて古びた建物を解体して更地にした。ところが期待通りに事は進まなかった。その後、いくら値を下げても土地はまったく売れなかったという。
「住宅が建っていると評価を6分の1にする減税措置があるのですが、更地にするとそれが適用されないため、固定資産税は6倍になりました。維持費を減らすために更地にしたのに、解体費が200万円かかったうえにトータルの税金が3~4倍になって泣きっ面に蜂です」(隅田さん)
椎葉さんは「土地神話」に警鐘を鳴らす。
「高齢の人ほど“土地は絶対売れる”との神話を信じていますが、人口が減る日本ではもはや不動産は確実に売却できる資産ではありません。実際に生前の親から、“あの土地は絶対に高く売れるから”と言われていたので軽く考えて相続したら、どこの不動産業者も取り扱わず、相続が重荷になる事例が増えています。特に田舎の持ち家や農地、山林などを相続すると、固定資産税や維持費がかかり“負動産”となるので、金融資産がほとんどない場合は相続放棄を選択肢とすべきです」
相続した実家を「空き家」として維持することにも警戒が必要だ。
「いまは『特定空き家』に指定されると、家屋があっても更地と同様の税負担を強いられます。空き家はほかにも衛生上、景観上、防犯上などさまざまな問題があり、私が知るなかでは、住宅密集地の古い空き家が倒壊して隣の家に被害が生じ、130万円を請求されたケースがありました」(椎葉さん)
誰も住まないなら、相続のタイミングで家を放棄することを考えるべきだ。
※女性セブン2022年7月7・14日号