6月17日に行なわれた日本電産の定時株主総会で、創業者の永守重信CEO(77)は隣に座る関潤社長(61)についてこう語った。
「社長はまだ見習い」
「逃げない限りは後継者として育てる」
永守氏が一代で築き上げた国内最大のモーター企業はいま、「後継者問題」に悩まされている。
日産自動車で執行役副最高執行責任者を務めた関社長は、永守氏に「後継者候補」として請われて2020年に日本電産に電撃入社。昨年6月にCEOの椅子を譲り受けたが、1年ともたずに“降格”され、永守氏が今年4月にCEOに復帰した。
その際に、関氏が再びCEOに就くには「あと3年くらいかかる」と厳しい評価をしていた。多くの市場関係者が、「関氏は外された」と考えていただけに総会での発言は驚きをもって迎えられた。
永守氏は「ポスト永守」を巡る人事で自らヘッドハントしては、その候補に厳しい評価を下すことを繰り返してきた。公の場で関氏を再び後継者に指名した真意はどこにあるのか。経済ジャーナリストの福田俊之氏が語る。
「今年1月、米ブルームバーグがCEO交代を示唆するような報道をした際に株価が急落しました。永守氏は“自分が復帰すれば株価は戻る”と思っていたのでしょうが、実際は永守さんがCEOに復帰した後も株価は思うように上がっていない。想像以上に株主の後継者問題への不安が大きいということでしょう。
総会では株主からも『後継者にどうイズムが浸透し、受け継がれているのか見えにくい』と疑問の声が上がったそうです。今回の永守氏の発言は、裏を返せば『後継者を育てている』と“言わざるを得ない”状況だったのかもしれません」