これまでの大学生は、3年生後半から4年生前半にかけて就職活動をするのが当たり前という風潮が続いてきたが、最近は必ずしもそうではなくなっているのではないか。先日、現役大学生から将来のキャリアについて相談を受けたネットニュース編集者の中川淳一郎氏が、コロナを経て変化しつつある大学生のキャリア観と就職・転職事情について考察する。
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先日、私が会った大学3年生の男性A君は、元々広告業界に関心があると言っていたのですが、最近は色々と関心事が変わってきているようでした。そもそも、大学入学時からリモート授業が多かったことやサークル活動もしていないことから、大学の友人や先輩と接することが非常に少ないのだとか。
これがキャリアについて考えるにあたって大きな影響を与えたようです。まず、友人と就活関連の話をする機会がないし、「○○先輩が××社の内定を獲得したらしい。お祝いがてら色々と話を聞くための飲み会をしよう」といった発想にならないようなのです。
かくして、業界選び等で参考になるような話を学内で聞く機会はほとんどなく、必然的に高校時代の友人で別の大学に行った人や、バイト先で知り合った社会人や起業に興味のある学生との接点が増え、次第に「就職活動をしないでもいいかな」と思うようになるのだとか。
今回会ったA君は、友人がすでに学生起業をしており、企業のウェブサイトの制作業務に携わっていると言います。現在、A君もその業務に携わっていて、「若手サラリーマンぐらいは月収があります」とのことです。もうそうなると、学生生活の傍ら、仕事を頑張り続け、そのままこの友人の会社に入って共同経営者になるのも手かな、と考えるようになったとのこと。
これには私も「それでいいんじゃないかな」と言ってしまいました。現在、私は48歳ですが、私達の時代だと「最初に入る会社が大事」という感覚がありました。いわゆる「社格」というものですが、最初に入る会社の「格」が高ければ高いほど、給料そのものが高くなるし、転職の際も有利になる、というのが定説だったのです。とはいえ後述するように、今はそこまで意識されなくなっています。