さらに、次の4つの条件に当てはまったとき、女性間でマウンティングが発生すると森さんは定義している。
第1条件が、「日常的に関係性が構築されている。あるいは、これから関係が続くことが予想される女性同士」であること。第2条件が、「Aが『自分の方が立場が上である、優れている』とBに暗示的に誇示する」こと。第3条件が、「BがAの言動を受けて、自分の方が立場が下であると感じ、不快な気持ちになる」こと。第4条件が、「Aは加害意識がない、あるいは加害意識がなさそうに見える」というものだ。
「現時点で、マウンティングをなくすことは難しいと考えています。それは、加害者の方は無意識だったり、加害意識がないことが多いためです。一見、ダメージは小さなものですが、日常的にダメージが積み重なることで心身の健康を損ねるリスクもある。今回の研究は、マウンティングを受けた側がダメージを受け流して軽減したり、マウンティングの仕組みを知ることで傷を癒し、元気に日常を送る手がかりにしてほしいと思っています」(森さん)
終わりの見えない三すくみの関係は厄介ではあるが、こんなケースも存在する。
ちくちくと攻撃する“作戦”
青森でwebデザイナーとして活躍しながら子育てをしている市川冴子さん(仮名・40才)は、ママ友の間で“三すくみ”を感じていると語る。
「東京出身で、高校生と小学生の子供を持つママ友が数年前に夫の転勤で引っ越してきたのですが、何かとマウントを取りたがる。『うちの長男は、ランドセルを買った後に都内の私立に受かっちゃったの』『田舎の子は競争がないからいいよね』って止まらない。おしゃべりしていても、『うちは代々、都内の名門女子校に通う家系で……』って、そればっかり。
フリーランスの仕事をしている私が仕事の報酬や税金のことで悩んでいると話したら、『うちの実家はビルを持っているから、税金だけで数百万円飛んで大変』って張り合ってくるので呆れます。ですが、“東京出身”と“実家が金持ち”以外に彼女が自分自身を誇れるものが何もないとわかっているので、不思議とそれほどイライラしないんです(笑い)」
市川さんの場合は、ママ友の一方的な「嫌み」や「皮肉」の攻撃を受けているだけでは関係が破綻しそうだが、自身が社会的に自立している自覚があるため、“三すくみ”の関係が出来上がって、逆にママ友との関係を持ち堪えているとも言える。
「検証していないため断定的なことは言えませんが、三すくみの関係というのは、マウンティングが終わらず傷つけあいを繰り返す一方、小さな傷をちくちくとつけあって長く継続させる“作戦”とも言えるかもしれません」(森さん)