娘さんがひとりで残って練習していつでも自由に帰宅でき、練習しなくても文句を言われることがない場合、あるいは職場の同僚同士で互いに腕を磨くために自主的にカット練習をし、娘さんも負けないように遅くまで練習していたが、参加しないことで制裁がない場合などは、労働時間とはいえないと思います。
しかし、店主からスキルアップを求められ、カット練習を指示されたとすれば、業務上の指示によるといえます。さらにカット練習を行う回数や時間、あるいは目標なども示されていたとすれば、カット練習の時間が労働時間になることは間違いありません。
その場合、店主は残業時間に対応した賃金の125%の割増賃金が必要ですし、午後10時以後の練習時間には深夜割増(25%)が加算されて割増分は50%になります。
労働者にとって賃金は最も大切なことですから、労働基準法で厚く保護されています。残業代の不払いは、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金で処罰される犯罪です。
閉店後のカット練習が店主の指示による場合には、都道府県の労働局長の指導や助言を受けることができます。最寄りの労働基準監督署の相談コーナーで相談してください。
【プロフィール】
竹下正己/1946年大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年弁護士登録。射手座、B型。
※女性セブン2022年7月28日号