世の中を震撼させた安倍晋三・元首相銃撃事件。元首相が遺した莫大な遺産の行方はどうなるのか。国会議員の資産公開によると、安倍氏名義の資産は、山口県下関市の敷地約1000坪、延べ床面積633平米の邸宅や山梨県鳴沢村の別荘(建物のみ)、2478万円の定期預金や株、ゴルフ会員権(6口)など総額1億円超となっている。
ただし、この資産公開は普通預金が公開対象になっていないことや不動産が実勢価格を反映していないなど、資産の全貌は判然としない。専門家は、相続税評価額は少なくとも2億~3億円になると推測している。
法定相続分通りなら、昭恵夫人はその3分の2を相続する(母の洋子さんが残り3分の1)ことになる。そうした中、注目されるのが昭恵夫人の「配偶者居住権」だ。
安倍氏といえば、渋谷の高級住宅街・富ヶ谷の「資産価値20億円」といわれる豪邸がよく知られている。
1140平米の敷地に建つ地上3階、地下1階(延床面積約2000平米)の建物で、居宅部分と賃貸部分に分かれている。安倍夫妻は居宅部分(各フロア約250平米)の2階に住み、内部階段でつながる3階が洋子さんの居室、1階にはかつて安倍氏の兄・寛信氏の家族が住んでいた。
安倍政権時代には、近くに住む麻生太郎・副総理(当時)がしばしばこの安倍邸をお忍びで訪れて密談するなど、政治の舞台となってきた。安倍家の歴史をよく知る政治ジャーナリストの野上忠興氏が語る。
「富ヶ谷の家はもともと安倍さんの父・晋太郎氏が購入したもの。かつては2階建ての屋敷と広い庭があり、安倍派の議員や記者たちを呼んでガーデンパーティーを開いていた。晋太郎さんが亡くなった後、洋子夫人が一族で一緒に住めるように現在のマンションに建て替えたのです」
登記簿謄本によると、敷地は洋子さんと安倍氏の兄・寛信氏の共同名義、建物は1階と地下を洋子さんと寛信氏が持ち、安倍夫妻の居宅がある2~3階部分と賃貸マンション部分は洋子さんの所有だ。安倍氏の持ち分はなかった。
安倍氏が存命であれば、当然、兄や弟とともにいずれ母・洋子さんからこの家を受け継ぐはずだったが、それはかなわなくなった。しかも、安倍夫妻には子がいないため、代襲相続【*】もない。
【*本来相続人となるはずだった子がすでに死亡していたり、相続人の権利を消失していた場合、亡くなった親(被相続人)の孫やひ孫、甥や姪などが代わって相続する制度】
では、昭恵夫人は自宅に住み続けられるのか。