政治団体の代表者が死去した場合、政治資金はどうなるのか。総務省政治資金課の説明だ。
「政治資金規正法には、政治団体の代表が亡くなった場合の規定はありません。ただ、手続きとして代表を変更する場合は、変更があってから7日以内に届け出ることが規定され、解散する場合には30日以内に解散の届け出を出し、併せて収支報告書を提出するとなっています。
残金等については、政治資金規正法に特段の規定がありませんが、政党助成法には、政党支部が解散して政党交付金の残金が出た場合は国に返還しなければならないと定めている」
安倍氏の政治的後継者を決めなければ、巨額の政治資金は誰も引き継げないまま宙に浮き、そのうち政党交付金の残金は国に“没収”されることになる。
折しも、安倍氏の死去に伴う衆院山口4区補選が、遅くとも来年4月に行なわれる。
後継者候補には昭恵夫人の他、安倍氏の弟の岸防衛相の長男で防衛大臣秘書官を務める信千世氏、兄・寛信氏の長男の寛人氏(大手商社勤務)の3人の名前が挙がっているが、その後継者選びが4億円という安倍氏の“政治遺産”の行方にかかわるのだ。
安倍家を継ぐのは誰か
後継者問題は安倍氏の遺産相続そのものにも影響を与えそうだ。というのも、安倍家と岸家は同じ山口県でも別の選挙地盤を持ち、安倍・岸家の遺産相続は選挙区を考慮して行なわれてきた形跡があるからだ。
中選挙区時代、安倍氏の祖父・岸信介氏は、岸家の本家がある瀬戸内側の田布施町を含む旧山口2区から出馬し、娘婿で安倍氏の父・晋太郎氏は、安倍家の本家がある日本海側の油谷町や下関市を含む旧山口1区と棲み分けてともに当選を続けた。
その後、小選挙区制になると安倍家の地盤である山口4区(油谷、下関)を安倍氏、岸家の地盤である山口2区(田布施町)を参院議員を務めた後の信夫氏が継いだ。
2人の父・晋太郎氏が亡くなったとき、岸家の養子となっていた信夫氏にも相続権があったはずだ。しかし、安倍氏と信夫氏の資産公開を比較すると、安倍氏が安倍家の地盤である下関や油谷の土地を所有していたのに対し、信夫氏は岸家の地盤である田布施の多くの土地を所有しているものの、油谷や下関の資産は全くない。