安倍晋三・元首相の銃撃事件が起きたのは7月8日のこと。今もその衝撃は続いているが、残された遺族は悲しみの中で相続問題にも直面することになる。
国会議員の資産公開によると、安倍氏名義の資産は、選挙区である山口県下関市の敷地約1000坪、延べ床面積633平米の邸宅をはじめ、安倍家が代々庄屋を務めていた山口県長門市油谷の多くの土地や40万平米を超える山林、山梨県鳴沢村の別荘(建物のみ)、さらに2478万円の定期預金や株、ゴルフ会員権(6口)など総額1億円超となっている。
ただし、資産公開では不動産は実勢価格よりかなり低くなる固定資産税課税標準額で評価し、普通預金は公開対象ではないなど、金額は資産価値を正確に反映していないとされる。相続に詳しい山本宏・税理士によると「所有地の個々の固定資産税課税標準額などが不明なため、資産額を細かく算出するのは困難ですが、安倍氏の遺産の相続税評価額は、少なくとも資産公開額の2倍から3倍、2億~3億円にはなると推測されます」という。
安倍氏夫妻には子がなく、94歳の母・洋子さんが存命だ。そのため、法定相続人は昭恵夫人と洋子さんの2人。法定相続分通りなら、昭恵夫人はその3分の2を相続する(母の洋子さんが残り3分の1)ことになる。
それとは別に、安倍氏には“隠れ遺産”と呼べるものがある。蓄えた巨額の政治資金だ。
安倍氏の関係政治団体の残余金(2020年末の繰り越し金の金額)は、
■自民党山口県第4選挙区支部 1億7298万円
■晋和会(資金管理団体) 4495万円
■東京政経研究会 1億9708万円
■安倍晋三後援会(桜を見る会パーティー主催) 38万円
■山口政経研究会 34万円
■山口晋友会 9374円
など6団体で総額ざっと4億円にのぼる(山口晋友会以外1万円未満切り捨て)。
政治家が家族に世襲させたり、秘書などに地盤を継がせたりする場合、後継者が政治団体の代表に就任するなど団体ごと政治資金を引き継ぐやり方がよく行なわれる。
安倍氏自身も父の晋太郎氏の死後、父の政治団体を再編して総額約4億円の政治資金を継承していたことが報じられた。