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閉店のアンナミラーズ 会長は「撤退ではありません。We shall returnと言いたい」

店内にはミラー氏の写真が飾られている(撮影/内海裕之)

店内にはミラー氏の写真が飾られている(撮影/内海裕之)

──高輪店には、ミラー氏の若い頃の写真が飾られていますね。

浅田:ミラー氏とは実業家としても仲の良い友人であり、井村二郎氏(1号店開店当時の社長)に続く、私のメンター(師匠)でもあります。ある時、ミラー氏に「レストランビジネスで一番大事なことは何ですか?」と聞いたことがあります。すると、彼は即答で「ロケーション、ロケーション、ロケーション」と力強く言いました。立地が最も大事、だと。

 11号店にあたる高輪店は当初、「家賃が高すぎる」との理由で、役員会で却下された店なのです。投資金額が高すぎることから、社内の経営判断で、ここには出店しないと決まりました。

 ところが、その直後にミラー氏が来日し、「なんでこの場所を断るんだ? ここはホームランショップになる!」と言い切りました。そして、私に「もう一度、本社に掛け合え」と求めてきました。一般的に会社の役員会でノーと判断されたことが復活することは普通ありませんが、なんと高輪店出店案件が復活したのです。ミラー氏の真剣さにほだされ、頑張ってやろうということになったわけですが、結果的に、ここに出店してよかったと思います。

──ホームランショップになったのですか?

浅田:ミラー氏が言ったとおり、ホームランショップになりました。高輪店は開店日からすごかったですよ。オープン日の売り上げは110万円超、今もよく憶えていますよ。開店した年は年末まで、連日とんでもない売り上げを継続しました。高輪店は現在まで黒字が続いています。

 どうしてミラー氏には「ホームランショップになる」と最初からわかったのか。高輪店は2階に位置する。2階は1階よりも立地環境は悪いというのが、レストランの常識なんです。しかし、彼はこう指摘しました。「品川駅の真ん前に位置し、高輪口を出ると目の前にショッピングセンターがあり、その2階に入る店が視界に飛び込んでくる。ここは1階と同じだ」と。高輪店は遠くからも見え、1階からエスカレーターで上った場所にあり、デッキでつながっている。動線も含めて1階と同じで、とてもいい立地と彼は判断したのです。

──高輪店の閉店でアンナミラーズの灯火がいったん日本の街から消えます。パイやチーズケーキは引き続き公式オンラインショップで販売していくそうですが、閉店を惜しみ、新店のオープンを望む声が高まっています。

浅田:39年間にわたり運営してきた高輪店は、国内で最後まで残ったホームランショップとして幕を閉じます。今年8月31日で閉店しますが、国土交通省の品川駅西口基盤整備事業に伴う移転要請を受けての退店であり、撤退ではありません。いい場所が見つかれば、もちろん、新店を出してアンナミラーズのスタイルと文化を引き継いでいきたい。

「We shall return(我々は必ず戻ってくる)」と皆さまに言えるよう、高輪店同様の集客力が得られる立地を探そうと担当部署に話しています。

(了。前編から読む

取材・文/上田千春

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