米国の輸入額は中国が1位
ロシアによるウクライナへの侵攻とそれに対する経済、金融制裁は現在のところ、欧州経済に大きなダメージを与えている。
米国はインフレ圧力が収まらない。前月に続き7月も0.75%の利上げを決定したが、利上げで需要は抑えられても、供給サイドの要因をやわらげることはできない。
ニューヨーク州ではサル痘の感染拡大により、緊急事態宣言が発せられたばかりである。今後の感染状況次第では、需要サイドばかりか、物流、従業員の確保など供給サイドへの影響も心配され、スタグフレーション懸念が更に高まりかねない。
その上、米中関係の決定的な悪化により中国からの製品供給が滞るようなことがあれば、米国経済へのダメージは極めて大きい。
米国は経済規模、輸入額では依然として世界最大である。しかし、製造業の生産規模(名目GDP)では中国の後塵を拝しており、中国の59%の水準でしかない(2020年、出典:世界銀行)。
米中の貿易関係を整理しておくと、2022年1~5月における米国の輸入額では、メキシコ、カナダをおさえ中国が第1位(全体の16.7%)である。一方、同じ期間における中国の輸入額では、台湾、韓国、日本に次いで米国は第4位(全体の6.9%、ドルベース)である。両国間の貿易が阻害されることになれば、物不足の影響は米国の方がより大きい。
経済における中国の一人勝ちを阻止するシステムを日米欧が新たに構築するにしても、今回のように中国側から一方的な反発を招くようなやり方では共倒れになりかねない。
投資家の立場からいえば、グローバル経済の拡大が望ましい。自由化、グローバリズムを後退させることなく、国際協調を前提とした斬新的なやり方を模索してもらいたいところだ。
文■田代尚機(たしろ・なおき):1958年生まれ。大和総研で北京駐在アナリストとして活躍後、内藤証券中国部長に。現在は中国株ビジネスのコンサルティングなどを行うフリーランスとして活動。ブログ「中国株なら俺に聞け!!」(https://www.trade-trade.jp/blog/tashiro/)も発信中。