ロシアのウクライナ侵攻を機に、欧米諸国が様々な経済制裁を実施している。ロシア経済が苦しむ中、欧米も制裁に伴う痛みが生じかねない状況だ。そうした中で中国が「漁夫の利」を得ようと虎視眈々と狙っている。
各国の株式市場も軟調な展開が続いているが、そうした中で急騰している株のひとつが、中国株の錦州港(上海A株、600190)だ。2月24日の終値は1.41%高の2.87元。翌25日から3月4日まで、6営業日連続でストップ高を記録した。3月7日はストップ高から少し売られ9.23%高で引けたが、それから2日ほどの調整を挟み、ストップ高(3月11日)、ストップ安(3月14日)を繰り返すなど、派手な値動きとなっている。3月14日の終値は4.93元。2月24日の終値と比べると、72%高い水準だ。
なぜ急騰したのか。錦州港は「中国・モンゴル・ロシア経済回廊」計画の要となる港である。ロシアのウクライナ侵攻を受けて欧米各国が厳しい制裁を科す中、中国・ロシア間の貿易が急拡大するとの見通しで買われている。
米国は今、欧米諸国を主導し、金融、貿易の両面からロシアを国際社会から排除しようとしている。しかし、中国は欧米諸国の制裁に断固として反対している。錦州港の暴騰は「ロシア貿易は今後大きく拡大する」と予想する投資家たちが少なくないことを示している。
では、中国にロシアを支える力があるのだろうか。また、欧米と対峙までしてロシアを助けるのだろうか。
中国における1、2月の貿易額は9734億ドル。このうち対ロシアは264億ドルで、全体の2.7%でしかない。輸出は2.3%、輸入は3.2%である。1、2月のロシア向け輸出は41.5%増、輸入は35.8%増と急増しており、中国全体の伸び率(輸出は16.3%増、輸入は15.5%増)と比べ突出している。とはいえ、その突出した金額でも中国全体の貿易比率から見ればこの程度しかない。
グローバルでみたロシアの経済規模は韓国に次ぎ第11位だが中国の10%に過ぎない(2020年、IMF統計より)。製造業のGDPは米国の1.7倍(2020年、国連統計より)を誇る中国だ。世界に類を見ないフルセット型の産業構造を有している。もともと中国の各産業は生産過剰に悩むところが多い。欧米が完全にロシアとの貿易を遮断したとしても、ロシア程度の経済規模であれば、中国側には十分な供給余力がある。中国は世界最大の貿易国である。中国国内で生産能力が不足するものについては中継貿易をすればよいと考えるだろう。
欧米の厳しい制裁によってロシアは格安で物品を輸出し、割高で輸入することを余儀なくされるだろうが、そうであれば、中国は暴利を得ることができる。ロシアを助けるモチベーションは大きい。
それは金融でも投資でも同じだろう。銀行、企業にとって、またとない有利な条件で取引できるチャンスである。唯一の懸念材料は、中国のロシアへの支援を米国が厳しく阻止しようとしている点だ。