【20】国、自治体、NPO、NGOなどへの寄付は寄付額の10倍を相続税対象から除く
たとえば、国に1億円寄付したら10億円を相続税の対象から除外する。この制度ができたら、富裕層の大半が少なくとも保有資産の1割を寄付するだろう。
なぜなら、相続税の税率は、法定相続分に応ずる取得金額が1億円を超えると1億円増えるごとに40%から5%刻みで55%まで上がっていくからだ。取得金額が10億円なら5億5000万円を納めなければならないのである。相続税がないシンガポールやオーストラリアなどに移住する富裕層が多いのは、それを避けるためだ。
しかし、1割の寄付で残り9割に相続税がかからないとなれば、後顧の憂いがなくなった富裕層は、日本に住んだまま気楽にカネを使うようになるはずだ。
【21】国家に貢献した多額納税者の顕彰制度をつくる
たとえば、消費税を除く総納税額が50歳までに1億円、60歳までに2億円、70歳までに3億円を超えたら生涯所得税をゼロにする。
この条件をクリアするためには若い頃から相当な収入を得ていなければならないが、それでも死ぬまで所得税を払う必要がなくなるとなれば、積極的に税金を払うインセンティブができる。これは、【20】とともに、富裕層の財布の紐を緩めて資産を引き出す手段として非常に有効だ。
【プロフィール】
大前研一(おおまえ・けんいち)/1943年生まれ。マッキンゼー・アンド・カンパニー日本支社長、本社ディレクター等を経て、1994年退社。現在、ビジネス・ブレークスルー代表取締役会長、ビジネス・ブレークスルー大学学長などを務める。最新刊『大前研一 世界の潮流2022-23スペシャル』(プレジデント社刊)など著書多数。
※週刊ポスト2022年8月19・26日号