自民党有利と予想されている7月の参院選。その対立軸が出てこないのはなぜか。経営コンサルタントの大前研一氏が考察する。
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7月の参議院議員選挙は「自民党の圧勝」という見方が大勢になっている。報道各社の世論調査で岸田文雄内閣と自民党の支持率が上昇し、野党の支持率が軒並み低下しているからだ。
野党の存在感がどんどん薄くなっている現状のままなら、おそらくそうなるだろう。一見、自民党が選挙に強いようにも思えるが、実際には野党陣営が離合集散して“自滅”していると見るほうが正しい。自民党の政党支持率は30%台から40%前後にとどまっており、残りの6割以上は野党支持に転じてもおかしくはないからだ。
そもそも自民党の支持母体は、農業協同組合、漁業協同組合、医師会、歯科医師会、経団連、商工会議所、中小企業、商店街など従来の法制度や規制に守られてきた“既得権者”が中心であり、それらに政策の共通項はない。つまり、自民党支持層の主体は「ノイジー・マイノリティ」の寄せ集め集団なのである。だから自民党の政策は、各々の支持母体の要望に配慮したバラ撒きになってしまうのだ。
それに対抗する残り6割は「サイレント・マジョリティ」である。いわゆるサラリーマンなどの給与所得者やパート、アルバイト、フリーランスの人たちだ。しかし、今の野党はその層を取り込めていない。
では、サイレント・マジョリティのための政策立案はどこがやるべきなのか? 私は、日本最大の労働組合「連合(日本労働組合総連合会)」以外にないと思う。
イギリスは保守党と労働党、アメリカは共和党と民主党の二大政党制となっている。富裕層や既得権者を支持層とする保守政党と、都市部の労働者・生活者を支持層とする革新政党という構図だ。本来、日本にもイギリスの労働党やアメリカの民主党のような、サイレント・マジョリティを代表する政党が必要だ。
しかし、旧民主党の消滅後、離合集散を繰り返すばかりの日本の野党は、政策よりも人物本位で選挙を戦うだけで、自民党への対抗勢力にはなっていない。
となれば、労働者の代弁者である連合こそが政策集団をつくるか、政策立案ができる人材をアドバイザーに招いて、“対立軸”を打ち出すしかないと思う。