次に、刑事裁判により、詐欺犯人が有罪になっただけでは、被害は回復しません。詐欺被害者は、自ら詐欺犯人に対して不法行為に基づく賠償請求をし、詐欺被害の回復を図るしかありません。詐欺犯人が任意に支払わなければ、犯人を相手に不法行為責任を問う裁判を提起する必要があり、これが民事裁判です。
私人である被害者を原告、犯人を被告(民事裁判では「被告人」といいません)として争われます。もちろん、裁判官は刑事裁判とは別人で、民事裁判と刑事裁判は截然として区分されます。
ただ、犯罪被害者の権利保護のため、殺人や傷害事件など、人身被害を伴う一定の犯罪の被害者や遺族は、刑事裁判で意見陳述したり、損害賠償の命令をするよう刑事裁判所に求めることができます。
【プロフィール】
竹下正己/1946年大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年弁護士登録。
※週刊ポスト2022年8月19・26日号