天然砂の輸出禁止で建設・土木工事に大きな影響
米国のナンシー・ペロシ下院議長一行の訪問を民進党が受け入れたことで、台湾は窮地に立たされている。
中国側の報復措置に関して、軍事演習ばかりが注目されているが、経済制裁の方が影響は大きいだろう。
中国関連当局は8月3日早朝、天然砂の輸出禁止を発表、即日実施した。天然砂は、建材、レンガ、ガラスなどの原材料として広く利用されるが、中国では資源の枯渇を理由に2006年から輸出が禁止されている。
台湾は海岸線が長く、天然砂などいくらでも手に入りそうだが、海岸の砂は海水や貝殻を含んでおり、使い物にならない。一方、良質な川砂の産出量はわずかである。中国商務部はこうした現状を考慮して、台湾に対して特別に輸出を許可していた。しかし、今回、この特例措置を解除したのである。現状では天然砂の9割を本土に依存している。これにより今後、工場、住宅、ビルの建設、土木工事などが大幅に滞る可能性が出てきた。
更に、かんきつ類、冷凍の太刀魚、アジなどの輸入禁止も合わせて発表された。税関による検疫の結果、台湾産のかんきつ類から有害生物が見つかった。冷凍の太刀魚、あじなどからは新型コロナウイルスの陽性反応が出た。それが輸入禁止の理由だと当局は説明している。
表面上は厳しいルールがあるが、実態として台湾に対してそのルールは厳格には適用されていなかっただけである。そう考えると、これら海産物、農産物の輸入禁止は、明らかに制裁措置の一環である。
軍事演習と経済制裁の組み合わせの目論見
冒頭の統計によれば、2022年上半期における生鮮、冷蔵・冷凍食品の中国向け輸出は全体の11%で、日本、タイに次ぎ第3位と決して多くはないが、柑橘系フルーツ、太刀魚、アジなどに限れば中国向けウエイトは非常に大きい。そうした品目をピンポイントで狙った措置であり、一部の農業・水産業従事者に与える影響は大きい。
現在の経済制裁は、あくまで見せしめの域を脱していない。しかし、今後、民進党が米国をはじめとした外部勢力による政治介入を自主的に防がなければ、台湾は中国からさらに厳しい制裁を受けかねない状況にある。
米中覇権争いは、もはやどちらかが勝利を収めるまでは終わりそうにない。両国とも核保有国である以上、武力での戦争はありえない。直接武力衝突しない形、あるいは武力を使わない形での戦いになるのではないか。