たとえばBMW MINIです。1959年にイギリスのBMC(ブリティッシュ・モーター・コーポレーション)からオールドMINIが登場して41年間、ほとんどその姿を変えることなく2000年まで製造されていました。さらにブランドがBMWに移ってからも、旧型のデザインテイストや走りの軽快さという基本的な魅力を受け継いで新世代MINIとなった現在も、世界的な人気車として走り続けています。不思議なことにどの世代のMINIを見ても、まごうことなきMINIなのです。初代があまりに優れ、偉大で、影響力があったからこそ、「キープコンセプト」も現在まで受け入れられてきたわけです。仮にデザインや基本コンセプトを変更していたら、MINIは過去のものになっていたでしょう。
少しばかり話が広がりすぎましたが、キープコンセプトとは「このままスタンダードにしていく」ぐらいの覚悟はほしいとも思うわけです。確かに全長3.4m以下、全幅1.48m以下、全高2m以下でなければいけないという軽自動車のサイズがあります。その厳しい制約の中で大胆な変革は、言うほど簡単ではありません。
そこで初代キャンバスのデザインを見てみれば存在感があり、今でも鮮度はあまり落ちていません。なによりもデザインこそが人気の大きな要因でしたし、キープコンセプトの決断も十分に理解できます。でもそれだけではなく、他にもユーザーの心を掴むネタをたっぷりと詰め込まないと納得してくれません。
「ストライプス」と「セオリー」の2タイプ
今回の納得ポイントをしっかりと探してみました。
まず、全体のイメージですがパステル調のボディカラーも含め可愛らしさによって、これまでのユーザー層に訴求しようという仕様が「ストライプス」です。インテリアはホワイトを基調としたインパネを採用し、すっきりとした明るいキャビンの雰囲気を演出しています。新開発したというフルファブリックの肌触りの良さや座り心地のよさを実現しています。この点は旧型以上に、女性ユーザーに受け入れられるでしょう。
ボディのカラーバリエーションは新色2色を追加して、全8色。明るく軽快な印象の2トーンカラーを設定しています。
一方、新しい挑戦として上質さや落ち着きというイメージを求めた仕様に「セオリー」があります。シックなボディカラーにキラリと光るメッキ加飾をさりげなく装着して「上質さ」を表現しています。またインテリアには深みのあるブラウンとネイビーを組み合わせることで、落ち着きのある室内空間に仕上げました。細部に迫るとステアリングやシフトノブは本革巻きでした。ボディカラーのバリエーションは、シックな色合いを全7色。こちらはモノトーンの設定となります。
以上のようにカラーリングやアクセサリー、そしてキャビンの色使いや素材感などを差別化することで2タイプの仕様を制作したのが新型ムーヴ キャンバスの特徴です。こうした仕上げの差によって「あまり代わり映えしていなかった」という人たちにも訴えかけているわけです。そして先代では「ちょっと男性には気恥ずかしい」と躊躇していた人たちに対しても、全体に抑えの効いた雰囲気の「セオリー」なら対応できそうです。