また、医療費控除は世帯合算が可能であることを押さえておきたい。子供と一緒に生活しているなら、合算して申請したほうがよいケースもある。
“医療費は年間10万円を超えたら”という印象のせいで使い忘れている制度はほかにもある。
「セルフメディケーション税制は、対象の市販薬の購入費が年間1万2000円を超えれば、最大8万8000円まで所得控除を受けられます。対象の市販薬は、処方薬から市販薬に転用された『スイッチOTC医薬品』(レシートに★印がある市販薬)が中心で、これも家族で合算できます。ただし、医療費控除とは併用できず、どちらか一方になります」(風呂内氏)
医療費控除とセルフメディケーション税制の両方の金額を出して、控除額が大きくなるほうを選ぶのがよい。
医療制度は国ではなく、自治体が独自に実施しているものも多い。そのため存在自体を知らず、使い忘れているケースに注意しなくてはならない。
「人間ドック受診費用助成は、自治体によっては受診料の半分などを助成してくれるところもあります。ネットで『人間ドック助成 自治体名』で検索すれば、自分の住んでいる自治体でやっているかどうかわかるので、要確認です」(同前)
上限額は8000円のところもあれば、7万円というケースもあり、自治体によってさまざまだ。調べてみて損はない。
自治体によっては負担ゼロ
医療だけでなく、介護分野でもさまざまな控除や助成制度がある。介護の場合は、自治体独自の制度が多いため、サービスの存在を知らないケースがさらに増える。
家族の介護のために住宅をバリアフリー改修した際、工事費用の最大9割分(限度額18万円)の助成を受けられる高齢者住宅改修費用助成制度もその一つだ。
「要介護認定を受けていることが条件ですが、自治体によっては認定を受ける前でも助成を受けられたり、所得などにより費用負担がゼロになったりする場合もあります。そうした情報は、自治体の広報誌などに出ていることが多いのでチェックしましょう」(風呂内氏)
1か月に支払った合計の介護費が負担限度額(所得によって上限が異なる)を超えた時に、超過分が払い戻される高額介護サービス費も気を付けたい点がある。
「上限を超えて払い戻しの対象になると、郵便でお知らせが来ますが、郵便物が来ているのにうっかり手続きをし忘れている人がいます。こうした郵便物での通知を見逃しているケースは多々あるので、一度総点検するのがよいでしょう」(同前)
さらなる負担増が襲ってくる前に制度の使い漏れがないか、確認必須だ。
※週刊ポスト2022年9月2日号