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キユーソー流通システム:中長期で利益改善、長期目線での成長に期待

キユーソー流通システム(9369):市場平均予想(単位:百万円)

キユーソー流通システム(9369):市場平均予想(単位:百万円)

企業概要

 キユーソー流通システム(9369)は、食品物流の最大手企業です。4温度帯(常温・冷蔵・冷凍・定温)の物流ネットワークを全国に展開し、特にチルドや冷凍品などの低温物流に強みを持ちます。

 食品物流は、取り扱い温度別で、常温、定温、冷蔵、冷凍の4温度帯に分けられます。このうち、定温、冷蔵、冷凍の3温度帯は、倉庫施設や車両・コンテナなど物流インフラに特殊仕様が必要となり、そのため、提供できる物流会社は限られます。例えば、1台のトラック内でも、冷凍・チルド・常温・加温のなかから最大3つの温度帯を設定でき、かつ、各温度帯の荷室レイアウトを決められる仕様(特許取得済み)になっているなど、高いニーズに対応した物流サービスが求められます。

 さらに共同物流も可能な物流会社は、当時他になく、コンビニエンスストアや食品スーパーが弁当・惣菜などを強化する中で拡大するチルド・冷凍物流への需要を追い風に、成長を遂げました。

 もともとはキユーピーの倉庫部門で、1966年にキユーピーから分離・独立したのが、キユーソーとしての始まりです(ちなみにキユーソーという社名は「キユーピーの倉庫」の略とのこと)。

 キユーピーの代表的な商品のひとつはマヨネーズですが、その原料となるたまごは割れやすいだけでなく、温度や匂いの影響を受けやすいとてもデリケートな食材です。その品質管理の難しい食材の保管・輸配送を請負うことで、食品物流のノウハウが積み上げられていきました。

 当初はキユーピー製品を中心としたビジネスを行っていましたが、1982年にチルド・冷凍食品の共同配送サービスを開始して以降、競合他社の物流需要も取り込み外販を拡大。キユーピー依存率は2020年には、6.5%まで低下するまで独立性を高めてきました。

 また、長らくキユーピーグループの総合物流企業として事業を展開していましたが、2021年にはキユーピーの連結子会社から持ち分法適用関連会社となり、独立性が一層強まりました。(株式保有比率は当初51.6%→現在では42.4%)

注目ポイント

 足元業績は好調。今期も収益性向上の取り組みが奏功し、大幅増益の見通しとなっています。

 同社ではこれまで、無人搬送車やロボット導入による省力化など、物流センターの自動化を推し進めてきました。2019年には埼玉県所沢市に冷凍・冷蔵対応の物流拠点「首都圏SLC」を開所し、業界初の試みとなる「冷凍温度帯での自動化、省人化、オペレーションのシンプル化」をスタート。

 物流センターの全体的な稼働率向上による物流コスト削減効果に加え、生産性向上による利益改善が足元業績でも確認されています。今期も、運送効率向上、適正料金化、荷役効率向上などの取り組みを実施することで、さらなるコスト改善が見込まれています。

 今後の成長については、短期・中期的には、これまでのように既存事業による安定的な成長が見込まれ、これにインドネシアでの拡大が上乗せするという見通しです。インドネシアを中心とした海外での拡大、新領域への進出による成長は準備が整ったばかりというところ。今後期待される新たな成長機会ということで、成熟した市場の成熟した企業をポジティブに評価する理由となります。守りの経営に加え、攻めの経営も同時進行でやっているのは注目点です。

【プロフィール】戸松信博(とまつ・のぶひろ):1973年生まれ。グローバルリンクアドバイザーズ代表。鋭い市場分析と自ら現地訪問を頻繁に繰り返す銘柄分析スタイルが口コミで広がり、メルマガ購読者数は3万人以上に達する。最新の注目銘柄、相場見通しはメルマガ「日本株通信」にて配信中。

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