そしてこのパワートレーンに「ECON」、「NORMAL」、「SPORT」、そして国内のホンダ車として初採用となる「INDIVIDUAL」の4つの走行モードが組み合わされます。ちなみに「INDIVIDUAL」モードはドライバーの好みにあったセッティングが可能というドライブモードです。少々ややこしい気がしますが、古くからのホンダファンにとって、こうした細々としたセッティング機能は嬉しいところかもしれません。
ただ、正直言えば走行モードのセレクトはデフォルトを「ECON」モードにして、あとはホンダらしいスポーティな走りを実現する「SPORT」と、よりマニアックな「INDIVIDUAL」モードの3つでもいいかな、と感じます。もちろん試乗の最初にセレクトしたのは時節柄、少しでもガソリンが節約できる「ECON」で、走り出しました。
それでも全くの不足はありません。走り出しのトルク感は少しだけゆったりとしていますが、ワインディングでも高速でも市街地でもまったくもたつくこともなく、キッチリと走ってくれます。
このハイブリッドシステム、コンパクトカーの「フィット」にも与えられているのですが、これが実に燃費が良く、ECONモードを選択したときの燃費は、丁寧な走り方をしていると30km/L前後を実現してくれるのです。WLTCモード燃費は29.4km/Lですから、看板に偽りなし、といったところです。当然シビックの「e:HEV」にも、WLTCモード燃費の24.2km/Lぐらいは達成してほしいところ。今回の試乗は短時間であったため、より日常的なデータ取りはできませんでしたが、少々乱暴に走ったことも含め20.0km/Lを越えてくれました。改めてじっくりテストして、またご報告したいと思います。
時代とともに変化する立ち位置
ECONモードのつぎは「SPORT」をセレクト。これはもう、初期の立ち上がりからモーターのトルクを感じながらどんどん加速していきます。まさに“ホンダらしさ”を体現してくれるモードですが、燃費はやはり落ちることになります。
こうして半日ほど走ってみて印象的なのは「乗り心地の良さ」です。最近のホンダ車、とくに「e:HEV」は、フィットもヴェゼルもステップワゴンも、しっとりとした乗り心地を実現した上で、スポーティな走りにもキッチリと対応していることです。これはハイブリッド化によって重心高が下がり、さらにバッテリーケースがボディ剛性を向上させることにも起因しているからでしょう。低重心でフラット、そしてしなやかな乗り心地は、シビックをとても上質なハッチバックサルーンに変えてくれていました。
ホンダが電動化を急ぐと同時に、「e:HEV」というハイブリッドモデルを丁寧に育てていこうという方向性が見えました。この先、シビックには究極のSPORTモデル、といわれる「タイプR」が加わり、さらにホンダらしい走りと使い勝手の良さを大きな魅力として、もっと進化することになるでしょう。