警官には“おやつ代”を支給
警視庁出身の作家・濱嘉之氏が指摘する。
「国葬の際は警視庁の警察官約4万5000人の大部分が警備関連の業務に当たると考えていい。さらに関東管区、東北管区、近畿管区、中部管区から機動隊が集められる。応援の規模は警視庁の半分の2万2500人くらいになると思います」
合計7万人近い動員になる。公務員であっても臨時の動員をかければ当然、予算がかかる。濱氏に試算してもらった。
「警察官の超過勤務費が1人1日5000円として、3日なら1万5000円。食事代も必要です。1食1000円くらいで、1日3食。それに加えて『補食費』も出る。お茶とかジュース代のことで、みんな栄養ドリンクなどを買って飲みます。これが1日数百円。これらを全部合わせたものが食費です。国葬の前後1日ずつと考えると、食費は3日間で1万円くらいです。
他県から応援に来る機動隊員には超過勤務費や食費のほかに出張費が1万円上乗せされる。機動隊員はトラックなどの車両でも寝泊まりできるが、応援の機動隊員のうち1万人分程度はホテルが用意されると思います。この宿泊費が1泊5000円。警察だけでは足りない部分は民間の警備会社にも発注することになるはず。2000人をかき集めたとして、日当が1万5000円、3日間拘束なら3倍です。これらを積み上げると最低でも23億円くらいになる」
昭和天皇の「大喪の礼」も当時の警備費用は約24億円だった。動員されるのは警察官だけではない。前述の『故吉田茂国葬儀記録』には、〈遺骨が正面玄関に到着と同時に、自衛隊員により十九発の弔砲が発砲され、玄関で待機の儀仗隊は、「捧げ銃」の敬礼を行うとともに音楽隊は、奏楽を行うこと〉とある。
「吉田茂氏の国葬には儀仗隊など1400人を超える自衛隊員が参加した。今回も同様で、他に消防からも200人程度の応援があるでしょう」(濱氏)
その費用も加算すると警備だけで約26億円はかかるとみられる。
(後編につづく)
※週刊ポスト2022年9月9日号